2024/12/2 復興デザイン会議第6回全国大会「孤立する都市」
復興デザイン会議第6回全国大会「孤立する都市」(11/29-12/1、福島浜通り、東京大学)が無事終わりました。毎年、準備はバタバタしますし、色んな人に踏ん張って準備をしてもらいながら、会が運営できていること自体が、奇跡的というか、恵まれていることだと思っています。
また、感想も多くの人からもらって、励みになります。同時にもっと輪を広げていかなくてはならないとも思います。菊池さんに基調講演をいただきましたが、人の復興・地域の復興の取組みや関係人口の話など、国の検証でも明らかになってきていることは数多くあり、次の復旧・復興に取り掛かる時には、起点にしていかなければならないことだと感じています。また、台湾の花蓮地震の話をしてもらいましたが、行政で行き届かないところは数多くあり、民間の力は欠かせない。地域の復興においても、能登の漁村復興の話でありましたが国はメニューを提示するまでしかできない。そんな中で、地域で決めていかなければならない。有事における行政の力の限界は明らかになりつつあって、そういう気持ちを事前の段階で作っていかなければ、災害が起こってからではもう遅いのだと強く感じました。また、浜通りの開発の様子をスタディツアーで学びましたが、自治体間の連携は悩ましく、非常に重要なのだと思いました。能登の漁港復興でも漁港の役割の再編の話がありましたが、人が減る中で、インフラだけでなく、民間施設も広域的な視点でマネジメントしていかなくてはならないのだなと思いました。もちろん、「図書館まで遠い」のようなことは起こってしまいますが、どうモビリティでつなぐのか・なには近くにあるべきか、を明らかにしつつ、進めていかないと、と思います。行政と民間、自治体同士、また分野を超えた連携の必要性が、「孤立する都市」というテーマの中で浮かび上がってきたと感じました。能登半島地震の対応の中で、学はなにができるのか、を逡巡したときもありましたが、こういったことは産官の既存組織からは出てこないことは間違いなく、なにか貢献できるのではないかと思いました。
あと、もう一つ。平時から使うものでないと有事に使えない、そこを接続するデザインの必要性は「災間を生きる都市」というこれまでのテーマで明らかになり、復興デザインの基本の技術になりつつあるように思います。次の技術として、余白をどう使うのか、どう作るのか、どう活かすのか、があるのかなと思いました。復興の居住意向の経年変化で生まれる余白、ぽつぽつ空地の余白。さらにいえば、有事に備えるための余裕をいかに作るか、とも言えるかもしれません。余裕のなくなりつつある日本でとても難しいことかもしれませんが、、ちょっと考えたいと思います。
2024/11/6 土木学会誌11月号「土木学会創立110周年記念号ー土木の核とひろがりー」
編集にメインで関わった土木学会誌11月号「土木学会創立110周年記念号ー土木の核とひろがりー」が出ました。東川町の地方創生、大分の新電力、札幌のシェアサイクルから、ミズベリングと流域治水の両輪、事前復興まちづくり、土木の広報に働き方改革、ICTの興隆、スマートインフラへの道と、硬軟織り交ぜた読み応えのある号になりましたので、ぜひ読んでみてください(読みたいけど、手元にない人は声をかけてください)。
個人的な振り返りとしては、、
- 10年を振り返るつもりで始めましたが、それぞれ、13年前の東日本大震災の影響が、それぞれの今に大きく影響を与えていることを痛切に感じました。
- 同時に、変わりたいほど変われたのか、が途中からテーマになりました。確かに組織が大きくなるほど、長く続くほど変わりがたいのは一つの真理だと思います。その中で、外からの力を利用したり、変わらなければ・やりたいことがあるという心持ちの下、やってきた人たちがいる、ということがよくわかり、頭が下がりました。
- また、それぞれ15年続けてやってきたことが、いまやっと形になりつつあるということだと感じ、蓄積の尊さを知ると同時に、自分の未来に考えをもっと寄せるべきだと思いました。
- 危機感が表に現れつつも、それぞれの変化への道のりを知ることで、未来の世代(自分たち含む)へのメッセージも含んだ号になったと思います。
あなたの研究は世の中の何を変えたか?とか、自分の分野を発展させるために環境をどれくらい更新してきた?みたいなことはまだ実感としてないのですが、、読み返す度に、一歩ずつ進んでいかなくてはならないと、気持ちを新たにする特集に、自分の中できっとなったと思います。
2024/09/14 行動モデル夏の学校2024
第23回行動モデル夏の学校2024に参加してきました。今回は、はじめて、自分の研究室の学生さんたちと参加となり、(学生さんたちが一生懸命取り組んでいる姿をみて)シンプルにうれしかったです。
今回は、参加チームによるコンペティションのエスキス・講評と機械学習の講義を担当しました。コンペティションは、全体的に政策評価までしっかりとやりきれるチームが多く、また、MDCEVやRL(Recursive Logitのほう)といった複雑なモデルで推定できるチームもあり、総じてレベルが高かったと思います。もちろん、LLMの社会への浸透により、基礎的なコーディング力があがっていることの影響もあると思います。また、Equityをテーマにして政策検討するチームもありました。個人レベルの情報が密に観測ができる時代になる中で、どういったEquityを実現できるのか、そのためのモデリングをどこまで柔軟にできるのか、なかなか答えのないテーマではありますが、考えるべきテーマだと思います。また、気候変動問題が話題になる中で、日陰を扱ったチームも多くありました。国交省さんのPLATEAUが整備されて、建物高さデータが容易に使えるようになった影響も大きいようです。今後、さらに暑くなっていくとすれば、日陰の整備でよいのか、地下道や建物の中を通したほうがいいのか、総じて、どういう都市空間の形成が必要なのかといったことが議論でき、とても刺激的でした。あとは、経路選択には経路は列挙しないRLが常になっていたり、誤差項の話題はなくなっていたり、とモデルの移り変わりも印象に残りました。
講義のほうは、なるべく基礎をしっかりと教えようという昨年の方針のもと、構成されました。(研究室の学生さんにしか聞いていませんが)どうも、Parady先生の変数の評価の話しや中西先生のベイズのわかりやすい話しが面白かったそうです。モデルコンペティションも含めて、色んなモデルで色んなことができ、そのための理論も含めて、しっかりと浴びることができて、充実した時間を過ごしたようです。
あと、今回、Dr. Kenan Zhangから招待講演いただきました。North westernでの博士時代にDr. Nieと一緒に取り組んだRHSの均衡に関する研究や、ETHやEPFLにうつって取り組んだMaaSのsupply側にフォーカスしたモデリングに関する研究について、聞けました。終わった後に話していて、思ったのは、アメリカや中国ではRHS、ヨーロッパはMaaSがこの10年かなり浸透してきて、研究も盛んに行われているなあ、ということですかね。どちらもそれぞれの大陸で、研究としてもcompetitiveですが、Kenanさんは、capacityや配分に注目してやることで、他との差別化を測っているそうです。あと、RHSやMaaSに対して、日本はなんなのか、とも考えました。
(あと、Michigan時代に一緒に研究に取り組んだZhengtianやJintaoとも友達だそうで、、世界の狭さを感じました。)
2024/07/27 能登半島地震対応特別プロジェクト
計画学委員会の幹事長補佐の最後の半年の仕事は、令和六年能登半島地震対応特別プロジェクトの運営に大きく関わりました。まだ終わったわけではありませんが、タイミングとして、備忘録的に振り返りたいと思います。
まず、復興デザインなどで、事前復興の重要性を言っていますが、学会の災害対応については、調査公害にならないように行動すること、というwebページを事前に作成していたのみで、なにも準備できていませんでした。反省します。
やはり、事前の準備が大事なことは明らかでした。どういった趣旨をメンバーや関係者が意識するべきか、から議論が始まり、誰がなにをやるのかの議論にも時間を要しました。このあたり、事前に基礎をもっておくことはできたはずでした。
また、欲をいえば、横の連携にも備えがいると思います。例えば、建築学会や都市計画学会との意見交換はありましたが、じゃぁどうするか、なにができるか、なにをやるのか、みたいなこともやはり事前に調整しておかないと、復旧復興で起動することは難しい。そもそもの信頼関係の醸成、つながりの構築、知識の共有は復興デザインのような集まりでできます。が、大きな災害になるほど、有事対応しようとなるほど、小さな集まりにとどまらず、より大きな組織としての学会の影響も大きく、どうするのかという課題が顕れるように思います。それぞれ、学会としてなにかできるのかを問われる状況であると同時に、個々の活動の延長として対応すること、という考え方もあるでしょう。
答えがない問いであると同時に、意識が継続しづらい問題であることが、さらに難しさを募らせます。
2024/03/26 2023年度振り返り
筑波に来て、一年目が終わりました。振り返ると、ものすごく色々あったように感じられますが、まだ一年です。
ぱっと思いつくのは、とにかく色んな人にお願いして、話をしてもらいました。2+3(5)+(1)+6ですかね。学びたいことをストレートに伝えて、学ぶ機会を設けさせてもらえて、非常によかったです。次年度からは学生さんも研究室にいるので、また少しやり方の工夫が変わってくるかなと思いますが、続けていきたいと思います。
もう一つは、自分の研究や研究室について、伝える機会はすごく増えました。新しい研究室を知ってもらうため、なにをやろうとしているのか、なにができる研究室なのかを考えて、形・言葉にしていました。研究成果という意味では、それを形にしていかないといけないのですが、、まずは第一歩だったかなと思います。
あとは、↑とも関係しますが、学生さんとの面談もたくさんしましたし、演習授業もやれて、筑波大にきて、一年目に多くの学生さんとたくさん話せたのは、よい機会でした。教員という立場でいえば、なにを教える・なにを一緒にやることが、学生さんそれぞれの短期的・長期的な成長に繋がるのか、常に悩みますが、筑波に来て、改めて考えさせられました。
(一年目の今のところはですが)やるべきこと、やりたいことをぶれずにやれたのではないかと思います。周囲の環境が変わる中で、研究と教育にこれからも真摯に向き合っていきたいと思います。
2023/12/11 復興デザイン会議第5回全国大会 横浜大会
今年も、無事、開催できました。毎回、準備・それぞれの調整など色々ありますが、終わるたびに、それぞれのプログラムごとに復興デザイン会議の重要性を再認識させられます。U-30と東日本大震災の復興に携わった審査員の方々との議論、国交省から民家まで含めた広い表彰範囲、継続することで積み重なる復興研究の表彰、高校生の地域での取り組みから受ける足元を見つめることの重要性、ツアーで感じる現場の大切さと痛切さ、国際セッションで受ける視点の多彩さ、通常セッションも毎回異なった試みを提供いただいていて、非常にありがたい限りです。
今年のツアーは、関東大震災から100年目の横浜大会ということで、ほとんど残されていない100年前の震災を、どう、今、捉えなおすことができるのか、を参加者の方に歩いてもらって、考えました。事前復興のプロジェクトが全国各地で始まりつつある中、いかに災害被害を知り、いかに伝え、事前復興に繋げるのか、そのための第一歩が町を調べ、町を歩くことだと思っています。その中でも、100年前という長期の時間軸をどう見つめなおすかというのは困難な課題でしたが、それぞれのグループで発見があり、充実したものになりました。「災間を生きる都市」というテーマで臨む中で、「関東大震災の火災は都市化によりたしかに引き起こされた面があると思う。それをさらに都市化によって痕跡がかき消されているという事実があると思う。どういう形で都市の災害の記憶を語り継ぐことができるか考えるべきだろう。」というまとめを中尾先生からいただき、今一度、足元の都市を見つめなおしたいと思いました。
復興デザイン会議の5年間の復興政策・計画・設計賞とU-30コンペを振り返る「復興デザインとは何だったのか?」のセッションも非常に学びが多かったです。デザインとは何か、をまず平時から考え、その力を上げていかなければならない。時間を超えたリアリティをどう持たせることができるのか、人の間で記憶は継承されないが、人と時間、空間を超えて、何を紡いでいくことができるのか。専門を超えた力が必要となる復興において、その下地をいかに構築し、いかに信頼を結ぶことができるのか。この3つを伴いながら、歩んでいきたいと思います。
2023/09/30 Zeeshanさん、博士修了!
Zeeshanさんが博士課程を無事修了しました。2020年10月のコロナ流行の真っ只中に、イスラマバードでスタートした博士生活ですが、無事修了でき、一安心です。途中は少し主査として関わり、また、一貫して研究議論を続けてきました。博士の指導は初めてでしたので、後半になるにつれ、悩む場面も多かったですが、色んな制約がある中、彼の母国が抱える問題意識の下、彼が新たな公共交通への見立てを得てくれたことが一番の成果と思っています。また、ネットワークの最適化の研究はなかなか手が出したくてもキッカケを掴めない状態が続いていましたが、彼と一緒に始めることができて、僕の今後の研究も広がっていきそうです。同時に、計算の基礎・交通の基礎の部分をいかに教えるか・できるようにするかという部分が大事であることを教わったと思います。
いずれにせよ、本当に困難な状況の中、常に真摯に取り組んでくれたMuhammadさんに敬意を持っています。修了おめでとう。
2023/09/29 巨人の肩の上に立つ
筑波大にきて、取り組んでいるDSEPのキックオフシンポジウムで、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏(筑波大卒業生)に講演いただきました。印象に残った話として、大学の同級生は、(プログラミング)言語は学ぶ対象と捉えている人がほとんどだったが、自分は、言語をつくりたいと思っていた。アイディアとか柔軟な発想みたいな話はあるが、やはり、巨人の肩の上に立つ、ことは必要だろう。また、イノベーションというと技術革新を思い浮かべるが、Appleをみているとそんなことはなくて、魅力的なもので社会的インパクトを与えた成功例がイノベーションと認められているのではないかという話の3つでした。 一つ目と二つ目の話は、バランスが大事と思っていて、巨人の肩の上に立つという肌感覚と同時に、(自分で)つくりたい/つくれるというモチベーションが同居して、面白いことへの挑戦が生まれるのかなと思います。でも、巨人に頼りすぎてしまったり、自分が・自分がという発想が強すぎたり、と、うまいバランスはなかなか難しいです。 三つ目は、創発的研究事業の学内説明会に参加していて、破壊的イノベーションとはなにか、みたいな議論もあって、その時はこの5ページ目の図を使った説明が印象的でした。単なる選択と集中ではなく、イノベーションにむけたネットワーキングもこみで、創発をおこそうとしている。技術的新しさに限らず、組み合わせることでイノベーションに繋がるとすれば、創発事業のアプローチも的を得ているのかなと思いました。
2023/06/25 Trasnport Data Commons
下記のISTDM2023の参加に関して、もう一題。Relative Initiativeの中で、"Preparing for a common European mobility data space"や"The Transport Data Commons Initiative"というセッションがありました。Trasnport Data Commons(https://www.transport-data.org/)やPrepDSpace4Mobility(https://mobilitydataspace-csa.eu/)といったプロジェクトがEU全体で動き出しているそうです。気候変動問題への対応やConnected & Automated Vehicle(CAV)の都市へのインストール、深層学習・機械学習モデルの効果的な学習など、政策的な課題から技術的な課題までEU・全世界で共通する中で、Qualityの高いデータをできる限り多く利用可能にすることが、課題解決に貢献するという意志の元、動き出したプロジェクトのようです。"Share experience, knowledge and data"という発言もありましたが、気候変動に対しても対策前からのデータ収集がEvedence-based policy makingの観点からは大事ですし、CAVの都市への導入にあたっても他の都市の知見は大変参考になりますし、DeepLearningのためにはより多くのデータが必要です。一つの組織・機関では、多くの地域で質の高いデータを整えることは難しく、多くの組織が参加する意義は大きいです。また、shared dataとすることで、様々な分析の着眼で、多様な分析手法が適用されることになり、現象の理解、研究・開発の視点も広がっていきます(余談ですが、会議では、Research & Developmentではなく、Reserach & Innovationという言葉が多く聞かれました)。
2023/06/24 ISTDM2023
ISTDM23に参加しました。前身の愛媛でのISTS&IWTDCS 2018、2021年のアナーバー(オンライン)での前回、に続いて、三回連続の参加になりました。今回は、イタリアのIspraにあるEU Science hubにて、開催されました。99年前からヨーロッパの施設があるところだそうで、施設内のルールはEUのものに従うそうで、毎回、施設に入る際に手荷物検査がありました。transport data & modelingの会議ですが、大規模シミュレーションモデルや、AV/CVのための交差点設計、Urban Air Mobilityのためのネットワークデザイン、データ収集のフレームワークの話などが目につきました。また、keynoteと通常セッション以外に、Relative Initiativeとして、EUにおけるtransportation分野のトッププロジェクトやAV関連の対応状況、data commonsの取り組みなどが紹介されました。トップオブトップの国際会議というわけではないので、研究セッションのレベルの日本との差はそこまで感じないのですが、Relative Initiativeでトータルの取り組みを聞くと、彼我の差を大きく感じたところです。プロジェクトの規模でいえば、20M€/年/4件みたいな話が3つも4つも出てきて、それぞれ都市・交通空間を評価するためのツールを開発・展開していたり、データもどんどん共有されていたり。share experience, knowledge and dataと言っていましたが、新しいモビリティがどんどん出てくる時代だからこそ、うまく対処するために連帯して、経験・知恵・そしてデータを共有して取り組み、新しいテクノロジーにharmonizeしていく、という意思をEUは強くもち、実践しているように感じました。
アメリカは、大企業とトップ研究者が共同して、大きな開発をしているというイメージですが、ヨーロッパは行政部門と研究グループが協働しながら都市・交通を前に進めているという印象を持ちました。会場の周りにホテルがなくて毎日バスで通ったり、毎日手荷物検査があったり、参加費タダだったり、ハイブリッド設備がすごかったり、色々とimpressiveなことがありましたが、Relative Initiativeで同年代の人が力強く話している様子が一番印象的でした。
追伸:帰りがけにStrezaに寄り、Isola BellaやMadre島で贅の限りを尽くした宮殿をみて、貴族の凄さと石造りの長持ち具合に感嘆しました。
2023/03/31 振り返り
5年弱の東京大学工学部社会基盤学科の教員生活は区切りとなり,この春からは筑波大学に異動します.
学生時代は都市工学科で,最初は研究室や先生の名前も全くわからない状況から始まりましたが,異動のご挨拶をする中で,学科の先生方やスタッフの方から,惜別の声をいただいて,とても恐縮しました.神戸大時代は特任教員でしたので,はじめて教室運営に参加する立場になりましたが,先生方みんなでやっている様子をみて,学びながら,僕なりに真剣に取り組みました.そういったことを見ていてくれる環境にあって,惜別の声をいただけたのかなと思いますし,率直にそういった環境に身をおけたことを,ありがたいと思います.
また,講義の面でも,多くを経験させていただきました.特に教養1年生向けの初年次ゼミ,学科入りたての2年生向けの基礎経済学は,講義を自分で一から考え,工夫しながら,教えていく場となり,大変勉強になりました.講義していると,本当に学生はどう思って聞いているんだろう・面白いのだろうか,というのが本当に気になりますし,そこから,こうしたほうが通じるのかなと工夫する余地が生まれ,刺激的でした.学生さんからしてみれば,もっと確立された講義を求めているかもしれませんが,我々も人間なので,ご容赦を..あとは,やっぱり,基礎プロジェクトI,応用プロジェクトI,復興デザインスタジオといった演習系科目は,シンプルに面白かったなと思います.学生さんの個性やそれぞれの班で生まれるケミストリー(や揉め事)をみながら,アドバイスしていくのは(思ったようには全然進まないし)もちろん大変なのですが,半年を通してみると,それぞれ手と頭を主体的に動かしてやっている分,学生さんの成長を実感することができるというのが醍醐味でしょうか.演習を通して,実現性や専門性をどうあげていくのかといった部分の悩みはいまだ手探りですが,筑波大に移っても,同様の機会はありそうですので,僕自身,成長していきたいと思います.
研究室は,羽藤先生の築いた礎の上で,大変有意義な時間を過ごすことができました.また,最後,心のこもった送り出しをしていたき,大変うれしかったです.学生さんとの研究ディスカッションは常に自分が考えていることを試される場だったと思いますし,ゼミでは(その研究を面白くするための)小さな視点と(修論・卒論全体を面白くするための)大きな視点の両方を持ちながら,議論できるように少しはなったかなと思います.また,研究室は研究だけでは全然なく,全人格的な人間教育の場だったかなと思います(しかも,社会に出る前の最後の).僕自身も学生時代にそうした研究室での生活から影響を色濃く受けたと思いますし,そういう場で真剣に向き合うためには,本当に自分自身が学び・考えていなければならないので,本当に試される場だったと思います.
さてさて,新生活.今日,荷物を運び入れましたが,誰も知っている人もいない中(もちろん同分野の先生はいますが),ゼロから始まることをはっきりと認識し,ワクワクしました.
2023/03/24 祝辞
卒業式で祝辞を読みました.自分へのエール/戒めでもあるので,少し気恥ずかしいですが,残しておきます.
祝辞@東京大学 工学部 社会基盤学科 卒業式
非常に僭越ではありますが,学科教員を代表して,お祝いの言葉を述べさせていただきます。まず,卒業生45名のみなさん,卒業おめでとうございます.合わせまして,ご家族のみなさまも誠におめでとうございます.感染症流行下で大半の学生生活を過ごすことになり、大変なことも多かったと思いますが、それぞれ支え、大学に送り出していただき,本当にありがとうございます.また、学生のみなさんにおいては、入学以来、長い時間をかけて、学び、考え、議論し、また考えなおしてきた時間が、本日の卒業という場に繋がっていると思います。みなさんのこれまでの努力と精神に敬意を表したいと思います。
ハレの門出の日にあたりまして、祝辞として少しお話しさせていただければと思います。この中の多くの人は、社会基盤学専攻の大学院に進み、何人かはまた別の活躍の場へ、飛び立っていくと聞いております。4月からどのような場にいようとも,これから二年、五年、10年、また人生の中で、どんな道を歩むか、何を自分の仕事にするか、時に大きな選択しなければならない場面に遭遇すると思います。もちろん,常に小さな選択をしながら,歩み続けます。僕が思うのは、そうした選択にあたって、若い時こそより困難な道を選んでほしいということ,また、すでに選んだ道の上に今があり、次があるということです。
若い時の苦労は買ってでもしろ、という言葉もありますが、今できることを選ぶのではなく、今はできないが未来にできるようになる自分を想像して、選択していってほしい。全くできない、やれないことは選択肢の中には最初からないはずで、少しでも見えている選択肢の中で、躊躇してしまいそうな困難なチャレンジを選び、進んでいってほしいと思います。もうひとつは一度道を選んだら同じ場所には戻れないということです。時間は戻りません。選択したからには突き進んでほしい.それは,同時に,一歩一歩進んできたから今があり,選択にあたって、今までを大事にしてほしい、ということでもあります。
こんなことを伝えたいと思ったのは、みなさん、20年以上に渡って、本当に良い教育・生活を過ごしてきたからこそ、今があると思うからです。いままでを次に生かしていってほしい、生かすために選んでいってほしいと思います。自分の能力、努力だけで、ここまで来れたわけではありません。能力はまさに賜り物であり、努力する場所や時間があったのは、環境に恵まれたからです。だからこそ、みなさんには、広い意味でのノブレスオブリージュ、を真に感じて、これからの選択をしていってほしいと思います。ノブレスオブリージュというフランス語をそのまま訳すれば、高貴なるものの義務、となり,やや特権的で相応しくないかもしれませんが、広い意味で捉えれば、「自分の能力に対する公正な対価」だけでは済まされないほどの恩を受けて今があり、その偶然,自分が受けた恩・恵みを、少しでも多くの人に循環させる使命が、みなさん、もちろん僕にもあると思っています。今日という日はみなさんのお祝いであると同時に、親御さんや周りの人、そしてこれまでに感謝する日だと思います.その感謝を未来に向けて忘れず、そして次の挑戦に繋げていってもらえたらうれしいなと思います。卒業おめでとう。
2023/02/28 基礎経済学
基礎経済学の授業を2年間単独で行いました.いい経験になりました.
もともとはミクロ経済学のみを教えていた授業ですが,最近の社会基盤分野の研究やデータサイエンス系の進展を鑑み,ミクロ計量経済(因果推論)も取り入れて,授業を構成しました.ミクロ経済学のパートでは,ミクロ経済学的な原理を説明できるようになってもらうための動画レポート,ミクロ計量経済のパートでは,自分で仮設を立ててデータを集めてなんらかの分析をするという経験をしてもらうためのレポートを設定しました.あと,2年目は,費用便益分析をまったく知らないというようなことはないようにという助言をうけて繰り返し投資から税収までのフレームを説明したり,マクロ経済学的な見方も会得したほうがいいという助言もあって最後にマクロ経済のさわりを説明したりしました.
1年目は進行が早いという学生さんからの指摘がわりとあって,,とはいっても,スライドで説明するとどうしても早くなりがちという問題もあり,2年目は丁寧に前回の振り返りを行うということで進めました.週2回授業があるので,接続もよく,なんとかなったのではないかと勝手に思っています.とはいっても,色々な変数・色々なステークホルダーが出てくるので混乱しがちとは思います.前々回くらいからの復習をするというのもあり得たかもしれません.
計量経済のほうは,2年目は授業日程がトビトビだったこともあり,理解の連続性の面でもう少し厄介だったかもしれません.色々な授業を同時に受ける中で,一つの授業をどう理解しているのか,という感覚を僕自身が忘れてしまっているので,,どうデザインするべきか,悩む部分もあります.説明の時間を削ってでも,手を動かす時間を増やしたほうがよかったかもしれません.(感想をみていると,計量経済のパートを楽しんでくれた人も多そうで,よかったです)
社会基盤学科は,構造や水理など物理的にイメージがつきやすい基礎科目が多いのですが,対して,経済学はやや実態をつかみづらい側面があります.なので,なるべく社会事象やインフラにひきつけて,説明しようと一貫して試みました.また,やっぱり,3年・4年・院に近づくにつれて,立てられた問題を解くだけでなく,理論と相応する現象は何か,自分で仮説・問題をたてられるか,といった主体的に考える力が必要になってきますので,相談ありの小演習を出し,色々と考えてもらうようにしました.基礎科目でありながら,自分で主体的に考える機会があるということが計画系の良さでもあるのではないかと思っていますし,習う以上の力を得ていってほしいと思っています.
2022/11/25-27 第4回復興デザイン会議全国大会
「第4回復興デザイン会議全国大会 災間を生きる都市」を無事終えました.運営,登壇,審査に関わってくださった皆様,ありがとうございました.様々な人,地域がある中で,復興を考えることは非常に難しいということを,学ぶたびに感じます.そして,新しい学びがいつもあるということも同時に感じています.
最終討議で話したことですが,三日間を通して思ったことは,「東日本大震災の記憶や後悔が風化しつつある中で,今は平時ではなく,災害の間であることを伝えたいということで『災間を生きる都市』という全国大会のタイトルとしました.復興なんて古いと言われることもあります.ロシアによるウクライナ侵略が今年の2月には始まっており,難民というテーマをはじめて全国大会の中に加えました.その中で出た気候変動難民の話,2日目の議論やU30コンペで出た原子力災害による福島浜通りの被災者,また,森先生の基調講演の中にあった"周縁"の人たち.様々な困難に日々直面しており,本当に災"間"という言葉でよかったのかと自問します.もう一つは,初日に関東大震災100年のツアーを巡って,体感したことは,当時復興で作られた橋や道路はいまもなお生きているということです.もちろん,現代の状況に照らして考えれば,当時の復興のインフラのボリュームでは不足していたという指摘もあると思いますが,それでも,未来を最大限見通し,時間がない中,復興したのだと強く感じました.一方で,1.5度上昇という未来への予測がある中で,我々は気候変動難民や流域治水において何ができている/できるのか,考えなければならないと思いました.繰り返しになりますが,今の私たちが危機を感じない状況にあるのは,相対的な地域や人,時間の関係性の中で守られているからであり,そのことを痛切に考え,もっと未来に対して真剣に取り組んでいかなければならないと思いました.」
2022/07/30 土木学会誌編集委員振り返り
土木学会誌編集委員の二年の任期が終わりました。三つの特集と1つの連載に関わり、(甘めに数えて)10個のインタビュー・企画趣旨の執筆をしました。なにを特集で載せたいのか、どんな人に記事を依頼するのか、記事の意図をいかに伝えるか、といったことが編集の仕事でした。想定していたような(あるいは想定以上に)面白い記事が送られてきたときは、嬉しく、楽しかったです。一つひとつを具体に振り返ろうかと思いましたが、それぞれ思い入れがあるので解説しきれません。これっという言葉を引っ張ってきて、振り返りを締めたいと思います。
2021年4月号 30代の土木
趣旨:"The Future is Now-未来とは今である" ※未来にむけてできることは今にある,と,未来は今の"世代"のものだ,という両方の意味で使われている
小川仁志氏:大切なのは、どのように自分を活かすかである。それは常に自分の態度を顧みるかにかかっている。先ほども論じたように、ややもすると私たちは自分のことを優先したり、予算の範囲内でやるしかなかったりという消極的な態度に陥りがちである。しかしそれは、公共性を活性化するという意味では、決して望ましい態度とはいえない。※NHK教育でレギュラー番組を持つ前に依頼でき,幸運でした。
熊木芳宏氏:30代は仕事でさまざまなことを経験し、脂の乗っている時期。次へのステップアップを図る時なので、いろいろなことにチャレンジしていただきたい。臆してやらないよりは、まずやってみてほしい。※家では,震災が起こったら,自分はすぐに駆け付けなければならないものだと思っていてくれ,と言っているという話も印象的でした。
2022年1月号 福島復興へのあゆみ
趣旨:10年たった今もなお,帰還率0%の町がある。帰還困難区域と指定され,いまだ除染の見通しさえたっていない地域もある。中間貯蔵施設建設のため,先祖代々住んできた土地を提供し,2045年まで決して,その場に立てない人もいる。※中間貯蔵施設の面積の大きさが,まず,印象に残っています。
遠藤秀文氏:世界でも類のない多重災害を受けた福島の復興・再生を考えた時、客観的かつ多角的な視点、国家的なプロジェクトスケールの物事の考え方、事業形成プロセスのノウハウを身につける等の重要性を勘案し、本件に関わることを決意した。 ※劇的で甚大な災害を目の前にした中で,地元建設コンサルタントとしての活動,途上国業務を通じた人材育成,復興への思いを書いていただき,ありがたかったです。
菅原慎悦氏:本質的に科学と政治が絡み合った原子力政策において,無理やり科学と政治を分離しようとすると,議論の焦点も参加する人も限られてしまい,狭い視野の議論になってしまうのではないかということを危惧しています。 ※原子力政策の難しさを痛感しました
2022年5月号 土木と地政学
佐藤仁氏:読み解きは,相手国に対するある種の尊敬と理解,歴史に対する知識がなければできない。 ※多層性であるべき社会・世界の捉え方を粘り強く説いていただきました
カレン・アトキンソン氏:同時に,一緒に仕事をする相手がどのような誠実さ(integrity)を持っているのかを知り,その誠実さと向き合っていくことも重要です。 ※忍耐,傾聴,誠実さが,途上国での開発プロジェクトで求められることということでした。真摯に,そして丁寧に,開発プロジェクトと関わっている姿に感銘を受けました。
連載:Let's go abroad!
曽我健一氏(2021年5月号):土木を学んだ学生たちが土木の場で活躍してもらわないと、土木分野が段々としぼんでいくのではないかという危機感を持っています。卒業後も土木分野を選んでもらうために、彼らが活躍したいと思えるプロジェクトや研究をわれわれが創っていく必要があるでしょう。 ※activeに考え,次へ次へと進んでいくことの大事さを感じ,とても勉強になりました。
才田善之氏(2022年5月号):機会があれば、地域の中小企業の技術者も海外に出ることができます。海外経験で得る経験はすごく貴重です。海外で成長し、全体を見られるようになることで、地域の業界を引っ張っていく存在になれると思っています。 ※非常に長い目で見て,人材を育て,地域を支えていることを痛切に感じました。
2022/06/25 TRISTAN XI@Mauritius
コロナ禍以来の初の国際学会として,TRISTAN XI@モーリシャスに行ってきました.まずは、その聴講メモです.(アブスト集)
Day 1: Keynote1 Marta Gonzalez
TRISTAN初参加で,KeynoteのDr. Gonzalez.ということで,TRISTANにもデータの波が直撃していることを感じざる負えない.カリフォルニアに移って,山火事に対する消防署最適配置の研究も始めたそうですが,パッシブデータ側で需要をおさえ,MATSimのチームとのコラボで配分側もしっかりと計算するという体制になっていた.オープンソースのMATSimの勢いも同時に感じる.TimeGeo (https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1524261113) の話などを聞きました.データオリエンテッドに細分化することで需要を抑えるというのは,最近の情勢を考えれば,ストレートな気もしますが,各国・各地でのデータ収集・展開・分析ととにかく精力的です.ユーザーのクラスタ化による予測を通じても,複雑なトリップチェインは当たらないところをみると,稀少・非日常・非周期なパターンの予測には,工夫の余地があるのかなと思いました.
Day1 S1 Mobility Pattern McGillのLijun SunからHankel decompositionによるdynamic predictionの研究.15分間隔で分解するにあたり,分解能の長さのアンバランスを補うためにHankel decompositionを使う.パッシブデータによる需要観測と,eigen decompositionは相性がよく、まだまだニーズがありそう.ただ、周期的な需要はあたっても,非日常的な需要はやっぱり当たらない.これをどうするか.
Day1 S2 Autonomous driving Srinivas Peetaからはcruise controlにおいて,前の車両の挙動を追従しすぎることによる無駄を省くためのアルゴリズムの提案.Alexandre Alahiからは,画像認識において,いるという認識だけでなく,何をしているかを認識して,さらにその先の行動予測につなげようという実装.僕は,相互作用したの同時決定問題を,近似アルゴリズムと量子計算でそれぞれ解くという話をしました.まだ,未知の部分があるAutonomous drivingの実装に向けて,なにを問題とするかの決め方がなかなか難しいですね.
Day1 S3 Crowdsourced delivery さすがOR学会,ということで,レベルの高い発表が4つ並んでいたCrowdsourced delivery. 基本的な枠組みは,Crowdsourcingとあまり変わらない印象で,Michiganでの学びもあり,わりと聞きやすかったです.需要をどんなシステムで捌くのか,temporalなdriverに対してどうアプローチするのか.ドライバーの固定雇用も必要だがどのように契約していくのか.Georgia TechのAdam Behrendtの発表は,契約ドライバーをclosed system,一時ドライバーをopen systemの中で動いていくとみなし,fluid modelで最適化計算を可能にし,order poolingとorder splitingの状況による収益の変化を明らかにしていました.
Day2 S1 Mobility services 1 HongKongのYang HaiのチームからMaaSでVCGを使ったMechanism Designの発表.LUXのF. Vitiのチームからは,複数のCar Shareのsupplierがいる時に非協力ゲームの関係で解(供給量)が推移するとすると,片方のsupplierからの供給がゼロになってしまう可能性の指摘(下位問題は,supernetwork型のアクティビティモデルの導入によって均衡を仮定).Rideshare,MaaS系の研究の勢いはまだまだ続いていることがDay2で明らかに.
Day2 S2 Traffic modeling University of Washingtonからは,リンクベースの旅行時間とセルベースの旅行時間で,後者のほうが信頼性が高いという話をして,反対の声が続出.ParisのMATSim開発では,ミクロのゾーンレベルでの異質性を仮定して,パラメータキャリブレーションを行っており,推定に数日かかるという.その中で,キャリブレーションのやり方の整理を丁寧に試みる.SCOPEと名付けて,直接探索/サロゲート型,感度分析の方法,計算時間等も含めて,標準化を目指す.
Day2 Keynote Nikolas Geroliminis M^3ということで,modeling, monitoring, managementに関連付けて,レクチャー.ドローンでの観測(Moving Drone Monitoring)の絵も見せつつ,渋滞延伸のパターンを非負値分解で明らかにしていったり,Hierachical Control Framework,Max Pressure Controlによる制御.当然ではあるが,需要の程度により,どのような制御が効果を上げられるか,どのエリアで効果を上げられるかは異なる.需要が多すぎれば,細かな交差点での最適化で細々と改善するしかないが,中程度であれば,ある程度の流入制御で効果を上げられる.
Day2 S3 Urban networks CarolinaからFDを,信号状態に合わせて,分解するという話.fundamentalといわれるものを,さらに分解しようという野心的な試み.確かに,FDとはいっても,赤と青,それぞれどういう状況であるかで,大きく異なる性質を示していることは確か.どんな使い勝手があるか.交通状態推定の際に,信号による渋滞かどうかを判定をスムーズにできるようになるという話か.LTMに適用すると精度があがるのか..?増田君への質問も含めて,リンクベースやさらに細かい状態を基本単位として計算しようというスタンスは伝わる.
Day2 S4 On demand mobility 三たび,マッチングセッション.Parisからは Logic-based Benders Decompositionのプレゼン.MITのOR centerからは,ParaTransitのためのActivated Benders Decomposition.OR系の学会らしく,計算をしっかりとやりきるというベースももって,取り組んでいることが,全体的に伝わってくる.もちろん,OR系は、基本アルゴリズムで解けない(時間がかかる)というところから,ロジカルに発展させなくてはならないため,きっちりとした勉強が必要.問題縮小のためのColumn generationの適用も多いですが,こちらは,有効な変数を特定・分解すれば,高速に求解できるというフレームで,特に,Activated-のほうは,高速性ははっきりとしていて,(プレゼンもわかりやすく)すごかったです.元の参考文献はこちら(https://www.nature.com/articles/s41586-018-0095-1)だそうです.
Day 3 Excersion 船と海
Day 4 S1 Mobility Service 2 流行りのRHSセッション。Yafengのところで共同研究をしていたEPFLのCaioから。vacant driverのrepositioningを課金で制御するという論文。テストは大きめの二つのセルで、やっていたが、どのくらいのスケール感を目指しているのか。2メッシュのスケールでも、配車の効率性は上がっているが、vacant runによる渋滞が発生しているので、その按配には気を配る必要がありそう。Klaywegtからは経済モデルによるRHSの評価。Ann Arborのグループとやっていることは差はあまりないと感じた。違いはゾーンレベルで待ち行列で配車しているか、一番近い車をマッチしているか、か。Markov推移を仮定して、連続量モデルで定式化して、conic problemにして最適化して解く。いずれにせよ、RHSはマッチングを含む新しい問題で、まだしばらくは競争が激しそう。
Day 4 S2 Public Transport Cornell大学から、multi-modal mass transitの最適化の研究。fixed routeだけであれば、研究蓄積は大きいが、feederも考えることで問題が複雑化。目的関数は、ver1は、value*assign volume。Branch & Priceでも解ききれないので、Approximation algorithmを入れる。その上で、approxとexactの解の差を理論的に保証。ver2では、stochasticに拡張して、期待値最大化問題に帰着。質疑では、worst caseを評価した方がいいのではというコメント。続いて、ドイツからTariff zone planingの研究(この日のハイライト)。駅のネットワークと、zoneを分割するためのネットワーク(アルゴリズム)を用意して、ゾーン移動のための料金を決定するためのゾーン分割の研究。二部グラフの概念が入っていて、面白そう。stripeやringといった初期設定に依存した答えが出ているようだが、43%のレベニューが向上し、最適解との差も3%と良い結果。
Day 4 Keynote Theo TRISTANの重鎮であるTheoからのプレゼン。Capacity Service Planning in Freight Transportということで、shipper(demand)-hub-Carrier(supply)の関係性の中でlogisticの問題を定義・説明。TRISTANらしいキーノート。many-to-one-to-manyの問題に発展し、そこからuncertainity、item characteristic、ad hoc availiability、capacityなども対象になっている。さらに、時間軸が入ってきて、decision timing, delayといったtime sensitiveの問題も入る。tactical planning の話になると、service network designの問題となり、recourse aquision、multi stakeholder、fare、buldledなどが議論の対象となり、predictionの問題も同時に議論されていく。
Day 4 S3 Sharing Mobility Milanoからfree-floating car shareの話。予約なしの運用がほとんどのfree-floating car shareは車がなくて利用できないという問題が起こりやすい。look-ahead systemとして、現在利用中の車両の到着トリップ情報を使って、assignするというアプローチ。利用者の最大徒歩時間を与えて、その範囲でrequestに答える方法。完全情報・徒歩は700mまでで計算。効率性はある程度向上。続いて、Julia Yanから、RHSのpick up場所を、現在地ではなくて、少し移動してもらうことで、配車の効率性が上がるというLyftとの共同研究。一方通行が多いエリアでは、大事そう。congestionや行先、歩行可能距離の異質性などを踏まえて、配車場所を最適化できれば良さそうではあるが、そんなに変わるかとも思う。客側の選択余地を残しているのもポイント。最後のEPFLのSelinからのshared bikeの発表もあったが、GHGの削減の話がある中で、いかに効率的にshared mobilityを使うかは、まだまだ議論の余地がありそう。
Day 4 S4 Disaster & Crisis GeorgiaTechのDahanから。ハリケーンで壊れた道を特定する問題。車両と積載のドローンによって、探索する。その探索の最適化を図る。未観測状態が残っている中でも、ベイジアンアプローチによって、損壊確率を推定して、sequentialに最適戦略を更新していく?。日本だと、ITS Japanの走れたマップで推定・表示というやり方だが、スケール・密度がアメリカは違うのか、解決策は大きく異なる。
Day 5 S1 Freight Modeling -> Markets TU Delftからトラックの経路選択効用の推定。VRPでやるべきか、実態を知るためにアクティビティモデル型で推定するべきか。推定結果を見ると、パラメータも輸送品種による違いが出ており、案外面白い。トラック運転手も人間なので、休憩したり、走り慣れた道を通ったり、ということもあるだろうので、彼らなりの最適化があるという前提で、ネットワークやタイムスケジューリングを考えるのは面白そう。日本も時間に間に合うように夜中休むということもあるし、ただ早く動いているわけではない。(ただし、OR系ガチ研究者からは叙述型のアプローチへの批判あり)。ESSECのArchettiから、デポ→トラック→Station→公共交通→自転車→家という貨客混載の配送問題の最適計算。トラック・公共交通・自転車の3つの問題に分けて、求解(Operational FOT)。column generation based heuristicということで、線形緩和や双対性を使いつつ、解く。旅行時間の(外生)変化も入っており、面白い。3番目がスキップだったので、Marketのセッションへ。E-commerceのontimeの配送が受けられる範囲を計算する問題。車両が1台の時は限界費用は高いが、2台でペアを組んだ時の方が範囲は広がる。柔軟に対応できる時間帯も含めて、算出しており、面白い。
続いて、発表+その他編です。
0. TRISTAN XII の開催地立候補(Day2) Prof. Hato - Prof. Kamiya - Prof. Iryo - Prof. Fukudaの体制で沖縄開催で立候補。TRISTANは、参加者全員の投票で、次回の開催地が決まる仕組み。2013のチリでは、アルバとボリビアとどこかが立候補してアルバ(カリブ海)、2016はハミルトン島(豪)のみの立候補、2019はモーリシャスとチェジュとどこかが立候補して、モーリシャスという流れ。今回は、Theoも応援するSorrento半島(伊)と、MichelもメンバーのCreta島(ギリシャ)が他に立候補。Prof. Fukudaからもらったプレゼン資料で、Urata&Kondoでプレゼン。沖縄観光局のビデオが海と森の良さをしっかりと伝えており、好印象だった模様。SorrentoはNNと投票を結びつけて笑いをバッチリとるプレゼン。次に、Okinawa。Cretaは動画などはなく、食事や場所の魅力を端的に伝える形。SorrentoもCretaも、今回のモーリシャスもそうだが、sustanabilityやgreen系の認証をとっていることを伝えていたことは印象的でした。
1. Urata (Day 1)
Social interaction modelの配分をする時に、n-body problemになるという問題を解決するために、a量子comにより最適選択ベクトルを計算する、あるいは、b確率伝搬法による近似を使うという研究。ip55, ip57, ip63で発表した内容を、全部まとめてプレゼン。適用先としては、自動運転車も走行する状況などのフレキシブルな相互作用が連鎖する状況を想定。TRISTANなのでLocal interaction modelから、QUBOの最適化への式展開を丁寧に伝える形にしたが、あまり伝わりきらない。量子計算だとなんでNP-hardの問題が解けるのか、という質問が出た。質問の通り、量子計算による最適化が広まっている状況ではなかったので、quantum computingの計算方法からのつながりをしっかりと交通分野に整理して伝えることも大事と反省しました。
2. Y Fujiwara, Urata, Chikaraishi, A Fujiwara (Day 4) 非日常的な行動における目的地選択の問題。機械学習、周期モデルなどの利用により、日常的あるいは主要な目的地を予測することは可能になりつつある。同時に、RHSといった供給側の柔軟性は上がりつつあり、需要が少ないエリアにはRHS車両を送らないようにするシステムも生まれつつある。一方で、需要が疎なエリア・非日常的な行動も予測できれば、供給の柔軟性を生かして、サービスレベルを上げることが可能。という背景の下、非日常利用的な目的地選択モデルの構築を進めている。行動パターンの類似度によりassociation netwrokを構築し、隣接他者の行動履歴から選択肢集合を形成。元々の候補地が3000ある問題で、選択肢集合そのままだと、説明変数も少なく、ほとんど当たらない。対して、形成した選択肢だと15程度まで絞れ、10倍くらいの予測精度(でも、確率はまだ0.1)となる。
3. Kondo, Urata, Hato (Day 4) 一つのモチベーションとして、↑と同様に、目的地選択は、当たっているように見えて、当たっていない、というものがある。経路選択がノードとリンクの関係に減らしてるように時空間構造化というアプローチもあるが、避難移動にかかる時間と意思決定に関わっている時間の比率、既存研究・意思決定規範も含めて施設種・滞在場所を選択対象としていること、を考えると、あまり現実的には感じられない。という中で、丁寧にリスクと行動科学をやっているという意識を持ち、広げていこうとする努力をしていきたい。
0.の立候補プレゼンテーションのその後;二日目の昼にプレゼンしてから、コーヒーブレイクや三日目のday tripなどのタイミングで、ロビイ活動(?)を行いつつ、4日目のGala Dinnerでの投票に備える。沖縄のビデオで伝えた好印象さ、せっかくの機会だから(ヨーロッパから)遠い場所に行きたい若者?勢と、そろそろヨーロッパに戻りたい重鎮?勢に分かれている模様。投票のファーストラウンドは挙手制で、43、93、52でOkinawaとCretaが勝ち抜け。2ndラウンドは右と左に分かれる方式で、98、66で、Okinawaに決定。決定後はみんなから祝福をもらう(現実的な人からは、大変だね、とも)。最終日のランチで、SteeringのTheoと現地チームのMahdiを中心に、引き継ぎmtgを受けて、closingでも一言話して、終わり。
ということで、開催にむけて:普通の国際学会以上に、その他の部分が充実している学会なので、色々と丁寧な準備が必要かなと感じます。3回目の参加で、立候補絡みでTheoやMichelと話せたし、他の人ともちょっとずつ話したりできて、これまでにない経験で良かったなと感じます。TU Delftは、assistant profsがいっぱいいて、年に1回は誰かが国際学会をオーガナイズすることで、コミュニティを拡大し、レベルを引き上げている側面もあると思うし、これから3年の準備も楽しみだなとは思います。アジアからの参加者は、コストが高い面もあり、毎回少ないので、インド、香港、台湾など最適化系の研究者はいるので、ぜひ参加してもらいたい。
2022/05/31 初年次ゼミナール理科
初年次ゼミナールは、教養学部1年生向けに「『「教え授ける」(ティーチング)から「自ら学ばせる」(ラーニング)への転換』を目指した取り組みの一環として設計された少人数チュートリアル授業であり、学生に基礎となる学術的スキルを早期に習得させるとともに、学士課程全体を通して能動的な学習への動機づけを図る」という理念のもと、全1年生向けに行なっている授業。社会基盤学科からは二つのゼミナールを提供している。慣例的に二教員で三年間担当するという形になっており、地盤研と一緒に2年目。
提供しているゼミナールでは、具体に、工学部的なプログラム・ソフトを触るという過程を踏みつつ、インターネットによる調べ物や現地調査を経つつ、グループワークでのディスカッションにより、ロジカルな論理構築能力を伸ばせるようにという目標設定をしている。
一年目の去年は、対象敷地を砂町周辺でそれぞれ与え、復旧期に必要な水・バス交通などのボリュームをスタディする形としていたが、プログラム(PT集計とGIS可視化)部分との繋がりが弱く、あまりうまくいかなかった。そこで、今年は、応用プロの倉澤班の成果を下敷きに、避難開始シミュレーションを簡易に回せるように、金田さん・望月さんに事前準備してもらい、プログラム・ソフト部分を置き換えた。交通手段の選択肢限定や何日前から避難を始めるかといったバリエーションを学生さんがいじれるようになっており、GWを通じて考えた仮定を反映できるようになった。さらに、やることも明確にしようと近藤さんと相談して、色んな住民・組織のタイムラインを作成するという課題設定を行った。
GWでは、ひと班4-5人で、域内避難行動/広域避難行動/商店街避難生活/団地避難生活の四つの班に分かれて検討。避難シミュレーションの結果から、何人移動するのか・何人居残るのかを得られるので、そこをスタートに、ペルソナごとのタイムラインを議論するという課題設定とした。砂町現地調査+3回授業+発表会というフォーマットの中で、初回は過去の災害事例や江東区のハザードマップを調べてきて、どのような問題が起こるのかをTAファシリテートの下で議論して、二回目以降は、学生さん自身で議論を進められていた。どのチームもわりとチームワークがよく、3回ディスカッションすると、だんだんと問題認識が深くなっていったのが印象的だった。昨年はオンラインと半々だったが、今年は対面が基本なことも多分に影響していそう。
発表では、域内避難行動班は避難所が満員で子連れ家族でも右往左往する可能性、広域避難行動班は輸送力の高い鉄道が早期運休や早期での避難者の少なさにより避難にうまく使えていない問題点、商店街避難生活班は砂町銀座の道路の狭さにより水害瓦礫をまったく運び出せなくなる可能性、団地避難生活班は東京界隈のボートの数を考えると浸水している二週間の間ずっと孤立している若者が出る可能性と団地に逃げ込んだ場合の共用部や備蓄の不足の問題をそれぞれ指摘してくれた。団地に逃げられると話していた域内避難班が、団地での避難生活の難しさに気づくというように互いの発表の中で学び合えていた点もよかった。もう半分の授業期間があれば、リスク認知と避難開始モデルや、駅の歩行者混雑、瓦礫処理のVRP、団地の共用部のデザインとかに進んでいきそうな内容であったが、そうした具体テーマに入る場合は、二人一組とかのほうがスムーズになるのかなとも感じる。いずれにせよ、活発な議論を経て、しっかりと発表できており、よかった。
災害タイムラインが表テーマだとすると、裏テーマは、自分以外の人が考えることを考える、ということで、都市計画にむけて基礎となる力という説明をして、取り組んでもらっている。一年生なので、答えがない問題とは?というところからスタートするのだけど、最後は社会の問題を考える難しさを好んでくれる学生さんの感想があって、うれしく感じる。奥田さんも感想で言っていたが、個々の行動や災害の難しさは、微細に入るほど、色んな問題が表出するので、演習を通じて、教員・TAも勉強になった。
2022/05/19 土木学会誌2022年5月号「土木と地政学」
「土木と地政学」の特集が、土木学会誌の5月号に出ました。三回目の特集担当で、初の主査を担当しました。連載Let's go abroad!を担当している流れで、あまりこれまで考えたことのない地政学特集の担当ということで、かなり身構えましたが、無事に完成して、よかったです。
わりとリズミカルに進んだのは、最後の人材育成の記事群です。連載との繋がりもあり、国外企業、国内大企業、国内中小企業それぞれの視点で、三つの記事ができました。朝倉市の才田組からは、地域建設業の若手不足の現状を超えて国際展開する意義として、総合エンジニアとして海外で鍛えられることのメリットを感じており、また、さらに地域人材がいなくなっても国外から人を呼んでこれるのではないかという将来像までお聞きでき、大変勉強になりました。また、SMECのカレンさんからは、(他の企業も国際展開のリスクに尻込みする様子を横目に)リスクをとって、各地の地域・人と向き合い、インフラ開発による大きなインパクトを与えることの尊さを教わりました。日揮の高野さんの記事からは、地域ごとの違いが多分にある中で、システマチックに教育するのではなく、現場や先輩から学び・成長していく、土木の醍醐味が感じられました。人材育成については国内業務でも国際業務でも共通する部分もありますが、チャレンジを乗り越えて、より大きな成果を得ようとする姿勢が印象的でした。(執筆者の依頼は色々な人に協力いただきました。感謝。)
続いて、中盤には、注目トピックということで、PPPと防災技術を取り上げました。PPPは、カレンさんの話でも出てきましたが、制度や収入源の問題点で、万能ではない。ただし、投資してインフラ・社会環境をよくするという目的にむけては、コロナ禍で社会が大きなダメージを受けた中、工夫や取組の可能性はあるということと感じました。防災の話もその通りで、様々な災害に相対する日本だからこそ、地域の隅々に入り込む細かな技術から大きなインフラ技術まであり、多くの関心が寄せられているのだろうと思います。(国外からの視点も入れたかったのですが、できませんでした。丁寧な解説は、興味をそそられるものでした)
前半は、二つの座談会を中心に、時代や国々の国際協力分野の中での変化を描きだし、現在の日本と世界の国々の国際協力の現状をあぶり出しました。特に座談会は、特集全体を包含するように、国際協力の変遷、アジアに現れた地政学の興り、日本の技術の現在地とこれから、サスティナブルな国際協力、分野活性に向けた人材育成など、多彩な話題を議論いただき、とてもありがたかったです。
全てウクライナ危機前の執筆でしたので、特集の話題には入りませんでしたが、一月号の福島特集の中で取り扱ったエネルギーの話題のように、それぞれの国の戦略が絡みあい、表出する地政学的均衡を感じるとともに、さらに微細に入っていくと、国よりも小さな単位の中で、動き、移り、そして、生きている現実があることを痛切に感じました。その中で、やはり、根本は一人一人の人がいかに外を向くか、そして、様々な地域での社会インフラの重要性をどう認識するか、と思いますので、少しずつ貢献していきたいと思います。
※学会誌アンケートもあります(こちら)
2022/03/31 一年の振り返り
年度末ということで、一年の振り返りを少し。今年度は初めて主査として卒論指導しましたし、授業も基礎プロジェクト、基礎経済学、社会基盤学序論などなど、しっかりと担当し、個人的には変化の大きな一年でした。
コロナ禍の影響は相変わらずで、対面での交流に制限はあり、時間、感覚や価値感を共有するという場面は限られ、トータルの教育/生活としては物足りなさもあったかもしれません。それでも、対面での座学もできるようになりましたし、F2Fの雑談ができるようになり、残る印象も大きく変わりました。こんな研究も最近見つけましたが、やはり、まだオンラインへの社会的・人間的適応は途上であり、対面での交流が基盤となって、オンラインでの交流が生まれているのだと思います。
座学、演習、研究とそれぞれの学生さんと接するごとに、やはり、自分自身で常に学んでいかなければなと思いますし、現状維持は停滞を意味するという言葉も身に沁みます。少しずつでも変えていきながら、取り組んでいく意欲が大事ですね。
2022/03/26 DR
土木学会誌2022年1月号以降、細々と勉強していたのですが、電力需給ひっ迫警報で、脚光を浴びました(?)が、エネルギー分野ではDemand Responseというアプローチがあります。簡単にいえば、供給ではなく、需要を調整するということです。今回のように、各家庭で利用電力を減らすこともそうですが、工場のような大規模需要施設で電力を減らす(タイムシフトする)ことが、これまで時折行われてきました。電力不足による停電の問題は、常日頃から生じているわけではなく、暑い時・寒い時や(今回のように)発電所が止まったときに、日本では生じます。平時を賄うには十分な発電リソースはもっているが、ごく稀な需要のピーク時に、発電が足りなくなる可能性がある。ただし、そうしたごく稀なピークに備えて、発電リソースを整備した場合、大半の期間は使う必要がない整備となり、整備コストと便益が見合いにくい(といっても日本はかなり備えているほうではあるようです)。なので、こうした事態に対応するには、需要側を減らすことも一案であり、それをdemand responseと呼んでいます。特に、再生可能エネルギーによる発電割合が増えていくと、気象条件により発電量が減る可能性が高まる、さらに、太陽光による発電低下する夕方の時間帯(ダックカーブ現象)と、電気需要が増える夕方の時間が重なるということで、demand responseによるアプローチも注目されています。ただし、今回のように、稀な緊急事態としてはDRが効果を発揮しても、日常的に、自主的に電力使用量を減らすことはできるのか。個々人の意思決定に依存しないように、社会のシステム側に刷り込ませていくことはできないか。そのあたりが考えていくべきところなのかなと感じています。
2021/09/26 原発事故と福島浜通り、そしてエネルギー問題
上記テーマの土木学会誌の特集を担当することになり、色々調べ、執筆者を探し、考えました。以前に書いた2021年4月号は途中途中でこちらにメモを残しましたが、原発事故関連は、知らない事柄も多く、問題も複雑で、なかなか、こちらに書けるように考えがまとまることはありませんでした。とはいっても、やはり、まとめようとしなければまとまることもないので、少しチャレンジしてみようと思います。
特集全体の構成として、①東京電力福島第一原発(以下、原発)の敷地周辺の問題、②避難指示のあった原発周辺の自治体・住民の問題、③原発事故にも影響を受けたエネルギー政策の問題の3つの問題について、取り組みました。①②③はそれぞれ独立に進んでいるわけではなく、今も相互に影響しあっています。②周辺自治体・住民の問題については、除染と風評の問題が根底にあり、帰還できるようになった地域も生活者が増えないことに苦しんでいます。特集の記事の中では、この問題に対する視座は様々で、問題は複雑に絡み合っています。本当に除染できているのかという不信の問題もあれば、除染・対策は十分できているという立場もあります。放射能の安全基準を適切に下げることで風評を減らすことができるという意見もあれば、もっともっと風評を取り除く努力ができるのではないかという意見、直後に放射能による被害を受けたのだからより安全な基準でやってほしいという声もあります。避難生活やそれに伴う生活の変化自体が健康被害を生じているという側面もあります。個々人は、この10年の中で、それぞれの場所や思いで生活基盤を選択し、形成してきており、故郷に戻る選択が現実的ではない人も多くいると思います。避難指示が解除されたからといって戻れるわけではなく、雇用可能性があれば戻れるわけではありません。それぞれ、一歩目としての必要条件でしかないのだろうと思います。自ら選択できる必要条件が整ったとしても、引っ越しという選択を子供のいる世帯が行うことはやはり難しいでしょう。
大熊町、双葉町の町の面積の1/3を占める中間貯蔵施設。この大きさは、放射能汚染の被害の大きさを表すものでした。帰還困難区域も住民の希望があれば、除染して戻れるようにするという政府の方針が出たところですが、中間貯蔵施設の敷地内の住民は、元の場所に戻ることは2045年までできません。国・県・地元自治体・地権者・住民の中で、様々な考えや思いがある中で、福島全体の復興のためにと考え、行われた地元の意思決定は尊いものであったと思います。個々の考え方がある中で、なんのために意思決定していくのか、は常に向かいあわなければならないのだと思います。座談会の中で、政治と科学が不可分であると考えて熟議する必要があるという話が出ました。エネルギー政策/原発立地/放射能基準/区域設定は、科学的にできるという考え方もあると思いますが、やはり、科学も全ては見通せません。人に関わっていたり、長い時間かけるとどうなるかがわからなかったりといった理由から、リスクは常に残ります。そうした中、科学的分析を組み合わせて議論し、いかに国民的な意思決定をするのか、が必要になっているのだと感じました。選挙の季節ですが、こう考えると、公約がどうこうだけではなく、科学的な分析が常に変化しうる中で、何を考えて、意思決定するのかが大事なのだと思います。
原発事故そのものについては、あまり特集の中に出てきませんが、色々と読み物をしました。事故そのものについては様々な書籍がありますし、国会、政府、東京電力、民間のそれぞれの事故調査委員会でも報告されています。世界的に見て重大な事故を起こしたので当然ですが、福島第一原発事故以降の日本の反省・体制変化は当然世界的にみて注目を集めていたようですし、当時の福島第一原発所長の吉田氏の調書は世界的に見ても注目を集めたそうです。東京電力福島第一原発よりも高い津波に遭遇したものの大きな事故を免れた東北電力女川原発の話、戦後原爆被害を受けた中で平和利用の原発利用を議論した話は、技術者として大変心に残るものでした。社会の基盤を支える上で、どのような視座から施策を決めていくべきなのか、個々の安全をどう守るべきなのかは、常に心に留める必要があると感じました。"社会"や"組織"といった個人の技術者にとって大きな対象と相対したときに、何ができるのか、この問いを持ち続けることが、一人一人にとっての、東京電力福島第一原発事故の教訓なのだと思います。
エネルギー政策についても、ページ数は少ないですが、議論しています。特集の中心は、東京電力福島第一原発事故ですので、原子力エネルギーにどう相対するかが第一の論点になりますが、その点は、原発事故から議論や理解が進んでいない、ということが実情であり、まずはその一歩目を進めなければならないということと感じています。一方で、原子力エネルギーとの関わり方の議論が日本では進まない中で、世界のカーボンニュートラルの潮流は進みつつあり、(国民理解を含む)日本の政策は追いついていないと言えます。また、再生可能エネルギーが中心となっていく中で、大規模な送電線網よりも地域内の小型発送電ネットワークが重要であるという議論が、グローバルに見て進んでいるようです。他には、日本の再生可能エネルギーの発電能力を考えれば、需要側の調整が必要になってくるということが未来予測のようで、行動科学的に見ても、興味を感じました。
引き続き、考えていきたいと思います。
2021/03/13 AIプロジェクト振り返り
分担したプロジェクト(力石新道路:道路政策の質の向上に資する技術研究開発 "AI技術に基づく短期交通予測手法と総合的な交通需要マネジメントの研究開発")が無事3年終わりました。実働と言える感じではありませんでしたが、、薄く関わりました(薄く継続的というか,時折集中的にでした)。当初はGraph Convolutionのアルゴリズムも出始めくらいだったのが、3年の間に当たり前という雰囲気になり、交通分野でも数えるほどしか論文がなかったのが、国際学会では数件に一件は適用研究があるというように大きく変わりました。依然として、古典モデルの現象説明能力か、深層学習モデルの精度かという議論は残っているようにも見えますが、深層学習の精度の良さがはっきりしている以上、ある程度、目を向けて、取り組んでいかなければならない(特にサービス展開や予測など実務的な課題であるほど)と言えるでしょう。同時に、データ駆動である現実を前に学習アプローチも限界がある(特異現象は単にデータを集め続けるだけでは説明しきれない)ことが詳らかになってきており、古典と新進を融合したアプローチがそれぞれの分野/適用に求められるようになりそうです。このあたり,需要予測研究の従前からの課題と一致する部分でもあります。 とはいっても、サービス/ビジネス分野で有用そうであることで、人とお金が集まり、新しいアルゴリズムの開発/適用のスピード感はすさまじく、比例関係による予測を、非線形変換による予測に変えたことで、ある程度の現象の予測精度は格段に向上した(できる)ことは確かかと思います。 (というあたりが、三年間勉強した感想です。さて、これをどう活かすか。)
2020/12/26 土木学会誌2021年4月号❷
10/29の記事で宣伝した土木学会誌4月号にあわせて行った若手シンポジウムですが,無事終了しました.アンケートも300人超の方から回答があり,大変ありがたいです.ただいま,特集掲載に向けた執筆・編集作業の真っ只中です. 30代シンポジウムでは,「30代の今」と「2050への足掛かり」という二つのセッションを行い,僕は「2050への足掛かり」のセッションの進行を行いました.国交省,都市設計,建築家と,社会基盤,都市,建築と分野横断型の登壇者に登場してもらって議論しました.シンドボク2050というタイトルをシンポジウムにつけました.これは,必ずしも今までの土木ではない,これからの土木を考えたいということで“ドボク”としました.僕自身も都市工出身で流動しているということもありますが,地域や都市を作るのに,都市だけ,建築だけ,土木だけ,ということはなく,その間を行き来しながら,形成されていくことは多くの人に認識されつつあると思います.より良い場所を形創っていくためには,分野に縛られずにやっていかなくてはならない,そういう思いです. セッションは「2050への足掛かり」と未来志向のセッションだったのですが,“今”が大事という話が記憶に残りました.30年後というと遠く思えるが,今はじめた都市・土木の大規模プロジェクトが形になるのは30年先である,また今壊した構造物は絶対に2050には残っていない.歴史性はそこまで高くなく保全の対象とはなっていなくとも,当時の粋を尽くした建築物でまだ使える(現代オフィスビルほどの使いやすさはないが),そういった建築物・構造物をリノベーションするか,壊して建て替えるのか.それを決断した“今”の先が未来に繋がっている,という話でした.維持管理と言ってしまうとやや並行線・停滞感を覚えますが,リノベーションというと前向きな意味合いも含み,これからどんどん老朽建築物・構造物が増える中で,必要な取り組みと思います.“今”の話以外には,不確実な未来,変わっていく技術・考え方を受け入れてやっていかなければならないという話もありました.今もまさに感染症流行による不確実性を身をもって体験しているわけですが,変化はおきるものでその中で常に対応していこうという心持が我々の年代は強いかもしれません(他の年代のことはわかりませんが(汗)).ただ,受け入れるだけでなく,能動的に受け入れる余地を残していこうという話や,長い年月かかる・使われる構造物を作っているからこその楽しさがあるという話も出ました.やる前は不安でしたが,有意義なシンポジウムだったと思います. 4月号特集全体として,3つのトピックで構成しております.未来の話以外に,今の働き方に着目し,30代ならではの働きづらさやその解消のための工夫についての記事もあります.もう一つのトピックは公共性としました.30代の土木とは直接的な関係は薄く感じるかもしれません.が,土木のやりがいがなんであるかと,土木の人材離れが懸念されていることを考えた中で,現代における公共性とはなにかを示し,なぜ大事なのかを定義することができれば,土木で働く30代の方の思いを代弁し,また勇気づけることができるのではないかと思い,設定しました.期待を煽っています(?)が,良いものになるようにもう少し頑張ります.
2020/11/14 第62回土木計画学研究発表会
IP62で企画セッション「行動モデルの展開 -理論と応用-」を行い,11件の発表をしていただきました.いわゆる離散選択モデルの発展的な内容,アンケート調査やパッシブビッグデータを用いて知られていない行動パターンに迫ろうとする内容,配分計算をベースとしてモデル予測精度向上を試みた内容など,バラエティに富んだ内容となりました. 秋大会は,質疑は5分程度でなかなか直接的な質疑以外を話す時間をとるのは難しいのですが,covid-19の話や地域交通の話などは,狙いをどう設定するのかが非常に悩ましいなと思いました.これらの話題は,行動モデルの応用との関わりが濃く,施策・政策と結びついたモデル分析・予測が求められやすいです.ただ単にデータにフィットするモデルを作ればいいわけではありませんし、行動パターンの解明に特化するわけにもいきません。予測として活用するために、ベースとなる行動仮説と対象となる施策の両方を取り込んだモデル構築が求められます。もう一つ悩ましいのは、モデルの予測精度をどこまで高めるべきか、高められるか、でしょうか。精度評価にあたっては、評価単位も大きく影響します。1日の交通量を当てるのと、5分の交通量を当てるのでは、大きく違うということです。この評価単位は、やはり施策と大きく絡んでおり、なにに使おうとしているのかを考えながら、単位と目標精度を設定する必要があると思います。非常に多くの量・種類のデータを使いながらCVなどを行なっている場合以外は、"精度が高ければ高いほど良い"と一概には言えないかなと感じています。 モデル開発・構築自体はよりどんどん進化していますし、チャレンジする価値があると思います。シンプルなモデルであることも大事ですが,行動原理をより表現した工夫やモデルの深い理解も必要です.一方で、人の行動を評価するにあたり,(既存研究としてある)異質性とかクラスの話が根っこには存在して、開発したモデルを実装するときには,こうした根っこの部分を取り込むことが必要になるのだろうとは思っています.そのため,新しいモデルの開発・工夫にあたり,(推定や配分の)計算アルゴリズムと組み合わせた開発が欠かせない状況になっているのかなと思っています。
2020/10/29 土木学会誌2021年4月号❶
6月から土木学会誌の編集委員を務めていて、2021年4月号の特集にむけて、準備中です。土木の未来というテーマで、30代を中心に今と30年後の土木を考えるという挑戦的(?)な企画です。 今、という点でいえば、30代になると、仕事では上司もいて、部下もいて、という挟まれた環境となり、人を育てながらメインで働くという新たな段階に突入している人が多いでしょう。テクノロジーや働き方の変化にまず直面している世代かもしれません。また、世の中はどんどん単視眼的になり、短期の成果に追われているかもしれません。同時に、プライベートでは、結婚してたりしてなかったり、子供がいたりいなかったり、子供の年齢によって色んな段階があったり、と様々です。(子供の成長にあわせて)プライベートの変化に直面しているケースも多いでしょう。立場やプライベートが多様になるほどに、バックボーンに差が産まれた(20代の頃からの)同僚や友人も増えていきがちです。 未来、という点でいえば、2050年に起きていることを主体的に考えられるのは、まず30代なのではないか、と思います。(今の困難さに四苦八苦はしているものの)勝手に素晴らしい未来はやってこず、未来は今の地続きでしかない、と思います。地方、都市、テクノロジー、環境、災害、どう変わっていくのだろうか。いや、どう変えていくのか。土木や都市は一人では作れず、一方で、惰性で進むだけでは次の未来はやってこない。そんな中、なにを紡ぐことができるのか。 こうした背景の中で、自分たちの足元と道筋を見据えて、次の一歩を議論する。そのような号にしたいと思います。そのために、通常の編集とは異なり、若手シンポジウムと30代アンケートを開催します。シンポジウムでは特集の座談会の延長的な位置づけとして、聴講者にも入ってもらい、未来とはなにか、都市・土木はなにに向けて誰とどう取り組むのか、をドラスティックに展開したいと思います。アンケートでは、30代の個人個人の働き方、やりがい、未来を答えてもらい、特集の中に載せたいと思います。30代の置かれた状況やナラティブを集めることで、声・想いを上下の世代に伝える記事にしたいと思います。 ドラッカーは、初期の著書「産業人の未来」の中で、『われわれは、未来を語る前に今の現実を知らなければならない。なぜならば、常に現実からスタートすることが不可欠だからである。しかもわれわれは、すでに手にしているものによって初めて必要とするものを作り上げることができる。手にしていたいものを発明することからスタートすることはできない。』と言っています。30代の今と未来、ドボクの今と未来、果たして、なにを見つめ、どこに届くのでしょうか。
2020/09/21 機会.
先週は,オンラインでの集中講義×2に参加しました.一つは,価値と哲学を考える会で,もう一つは行動データを使ってモデルと政策を考える会で,どちらも毎年9月恒例です.Covid-19でどちらもオンラインに移行して実施したわけですが,教育が提供する機会を考える機会になりました.同級生や仲間と議論しろ,議論を通じて考えが深まる,というのはよく言いますが,向かい合って議論できるような気の置けない相手と相対することはなかなか難しく,成長の機会を逃しがちです.ただでさえ,covid-19で話をする機会が減少している中で,価値・哲学・モデル・政策といった難しい話を話題にあげることは,浅い関係性では難しいでしょう.今回は,こうした難しく・深い話題を対象とした場を提供することで,議論が続けられました.その中で,議論すること・言語化することの意義を認識したもらえたのではないかと思います.言語化するためには考えることが必要で,考えを持っていれば語れるわけではなく,議論する中で伝えるために考えを持つことができるようになっていく.普段何となく思っていることを,“伝える”というのは物凄く難しいことです.相手に揚げ足をとる意図がなかったとしても,語尾の選び方一つで大きく伝えられた側の印象は変わってしまいます.そのために,考えを練って,言語化する必要があり,その過程自体がより物事を深く考える機会になっているということだと思います.大学教育は専門知識を授ける場だけの場ではなく,工学的/知的成長を促すための場と捉えれば,幅広く将来にわたって価値を持つ考える機会をいかに提供することができるのかには,頭を悩ませていくべきなのでしょう. その他雑感としては,7日間PC半径1m以内に日中座りっぱなしは体(内臓)に悪い,オンサイトには余韻と間という良さがあって,1秒で生活に戻れるのは利点でもあるが,この二つを失う欠点も大変大きい.集中講義における夜の懇親会は学生へのストレス緩和効果として働いていたようだ,オンライン飲み会はちゃんと飲むことが大切な気がする,あたりが残りました. 2020/05/17 アナーバー生活IV(2月~5月)
3月からCOVID-19で自宅待機生活に入り,結局,自宅待機が終わらないまま,バタバタと帰国(5/17)となりました.3/11に州内で陽性患者が発生し,翌週からは授業はオンライン化,翌々週には自宅待機令とあっという間に進みました.検査背景は違うとはいえ,ミシガン州と東京では数字の0の数が一つ違うので,帰国すると,(感染が少ないなという)安心感があります.ミシガン州内はデトロイトの貧困層における感染拡大が顕著でした.エッセンシャルワーカーとして非リモートワークに従事していたり,水道が使えない(州令で貧困世帯も水が使えるように対応)等の事情があるようです.アメリカの大都市は同様の原因を抱えているのだろうと思います.現地にいて感じたのは,大学からの積極的な発信が早期にあったことが印象的でした.Flattened curveのための自宅待機であることを説明し,論理的に理解し,行動してもらうよう,促していました.学生への援助の表明やオンライン化の対応も早かったと思います. 州内では4月後半からは感染者数が小康状態に入ったことや同じ州内でも感染者数が全く違うこと,共和党と民主党の政治問題(Swing Stateで現知事は民主党)があり,自宅待機令を解除すべきかどうかという議論が巻き起こっていました.知事は粘り強く,自宅待機令を続け,帰国後の6月後半からは感染者は100人程度(最大2000人)に落ち着いてきて,小規模の集会やプールなどもOKになったようです.そうはいっても,感染を完全に断つことはできませんので,医療現場の対応可能な範囲内の小さな波に抑えることを念頭に政治的な対応をしつつ,市民は新しい生活様式に慣れていくということになるのでしょう. 研究活動として,一年を通して,Ride Sourcing(Ride Hailing Service: RHS)の研究に取り組みました.研究室も半分くらいの学生はRHSの研究を行っており,最先端の研究に触れながら,自分でも考えることができたので良かったです.(COVID-19で状況は不透明になりつつありますが)次世代交通システムの中でも,RHSはどの都市でも導入しやすく,スマホアプリを介した配車することで使いやすいといった利点があり,非車生活者の多い中規模・大規模の都市では有効なサービスだと思います.また,アメリカでは,こうしたUberやLyftもそうですし,他の様々な次世代システムも受容され,どんどん生活に取り入れられています.新しいことを取り入れる感度・俎上があり,それが実際に世の中の生産性を上げているのではないかと強く感じました.この速度感は,何に起因しているのでしょうかね.また,新しい研究を始める中で,2週間に1度程度,打合せをしてもらえる環境もありがたかったです.また,研究のフレームワークの議論もフラットに行っているという印象で,論文のチェックが丁寧なことも印象的でした. 新しい研究のきっかけ,少ないながらも新たなネットワークや研究スタイル,アメリカの大学・社会文化といった学びを得た一年だったなと思います. 2020/02/18 ポスト京プロジェクト振り返り
(まだ少しありますが)ポスト京プロジェクト3@神戸大も三月末で終わりということで,その取りまとめとして開かれたDTA(&Control) WSに参加してきました.Mike Smith, Chris Tampère, Jack Haddad, Gunnar Flötteröd, David Watling, Richard Mounseといったヨーロッパの研究者などが集い,ヨーロッパにおけるDTA & Controlの最先端研究の議論を和気藹々と,という雰囲気でした.個人的には、Gunnarの抽象度の高いシミュレータの均衡計算方法の話は,彼の過去の論文も含めて,興味深いので,なんとか自分の研究に取り込みたいなと感じています.同時に,そのような抽象度の高い研究もあるのでMATSimの改良が長く続いているのだろうなと感じます.ミクロシミュレーションで行動表現の精緻化のみを進めても,研究的な面白さや計算の確からしさは保てないので,理論的な議論は必要かなと思います.WSのDiscussionでは,パラメータを増やしつづけるABMと理論的観点から少数パラメータで理解を深めるDTAと,それでも実務適用への展開は必要だがどうするか,みたいな話でした.FastDUEでもそうですが,DTA配分がパラメータ種別が限定的といっても,実適用には多数のリンクパラメータが必要になります.また,再現モデルの粗密は政策・アプリと表裏にありますし,交通問題が社会に近い立場にある以上,常に意識せざるおえない観点だと思います.一方で,仮想空間の完全捕捉状態であればより細かなモデル・パラメータを取り入れ、捕捉が疎になるほどそれを補うアソビ/原理を持てるかが重要になると思います.あとは,交通の問題に加え,都市・土地が入ってきた時どうするのか,とかも考えたりします. ポスト京プロジェクトの五年(後半2年は遠隔参加ですが ^^;)を振り返ると,交通流や計算機の話をよく勉強したなと思います.この機会がなければ,縁遠いままであったろう分野ですが,(まだまだ"出来る"には程遠いですが)新しい自分の色になるようなことにチャレンジできてよかったです.あとは,神戸に着任して早々に起こった熊本地震を対象とした研究がやっと実を結びつつあります.現地に行き,話を聞き,持ち帰って考え,様々なデータを集め,大阪北部地震や西日本豪雨災害後に起きたことも調べ,モデルフレームを整え,計算しながらモデルを直し,データと照らし,直してとコツコツしてました.3年間取り組んでくれた佐々木くんにも感謝です.一旦の区切りで,まだまだ発展の余地ありですので,もう少しやり続けないと思います. 思い返すと,IHPCSS@Boulderにも行き,少し世界が広がりました. 2020/02/04 アナーバー生活III(2019/11~2020/1)
秋も深まり,生活や研究も安定してきたところに,11月はじめにまさかの大雪.平年は12月頃から降り始めるそうで,雪国なはずなのに大混乱でした.街中の道路は渋滞しており,坂道では滑っている車も多かったようです.ものすごく渋滞しているラウンドアバウトをみていると,左側優先のラウンドアバウトにおいて,雪によってサービスレベル(車の加減速)が落ちた状態で,左側から一定の間隔で車がやってくると,うまく交差点に進入できず,渋滞列が長引いたようです.混雑側の道路のほうが需要は多いが信号がないために調整機能が働かず,普段なら入れる程度の車両間隔でも加減速が難しい雪道では入り込めない,ラウンドアバウト内の車両速度も落ちているので捌ける台数も減ってしまう,そのような感じで,どんどん渋滞列が伸びていっているようでした.数日経つと,渋滞道路を避け,優先側の道路側に迂回して該当交差点に進入している車も見受けられました.結局,今のところ(2/4現在),一番雪が積もったのがこの時期でした.どうも今年は日本同様に暖冬のようで雪が降る回数も少なく,5℃くらいまで気温が上がる日も週に1度くらいはあるので融けてしまうようでした.よかったような,やや拍子抜けのような. 1月は初の米国内出張でTRBとPhoenixに行ってきました.初のTRB参加でした.思っていたよりもテーマが幅広く,舗装や街路計画に当然new mobilityまであり,刺激になりました.今回の自分が選んだ会場の好みもあると思いますが,OR的な要素はやや薄く,プランニングやデザインの話をきけて,社会的な意識(例えばミレニアル世代は運転しないとか)にむけて複数の交通データを使って分析するといった理解のための問題設定も多く,総合交通学会らしい豊かさを感じました.公共交通の研究はミシガンのcivilにはないのですが,都市の交通問題を考える際には必須であり,その際にはアメリカではequityが重要な視点になっていると感じました.あとは,温暖化対策も意識の一つとしてあるというのも違いを感じます.ラボの学生さんには,手法的にとんがった研究が少ないのがやや不満そうではありました.その点はinformsの方が刺激的でしょう.あとは避難関連研究のポスター・オーラルで情報収集をしてきました.一度に災害関連研究をやっているアメリカの研究者のトレンドを見えるので,ありがたかったです.ego-centric networkで他者の避難有無を調査して,評価している研究がいくつかあり,調査内容が進化していることを感じました. Phoenixでは,ミシガンで10月に偶然再開したアリゾナ州立大のProf. Pituに呼ばれ,研究発表とディスカッションをしてきました.ディスカッションで勉強したことは詳しくはすで↓に書きました.セミナーはZoomを使って誰でも参加可能(チェコからも参加者がいたとか),終わった後は動画も公開と知識のオープン化に貢献しており,すごいなと思いました.きちんとマイクやカメラ,ネット環境を揃えればオンライン参加も不便は少ないですし,ITSスタッフが準備する態勢でしたので,手際もよかったです.日本人のレクチャラーの研究者と話したり(オンラインゲーム上の個人観測の話しが面白かったです),なかなかアメリカでも予算の選択と集中が進んでいそうだなと感じたり,校舎がダウンタウンの再開発ビルだったので入っているのがコンピュータサイエンス学科ということで時代を感じたり,完全グリッドの都市構造に開拓の歴史を感じたりしました.夏は暑すぎるようですが,基本は爽快な気候で,グランドキャニオンなどがあるエリアまで車で4時間ですし,アメリカの非都市部を感じるにはなかなかオススメのエリアです. 年末年始はミシガン州の西の方を少し観光してきました.どこの都市にいっても思うのですが,libraryとchild museumが子供の遊ぶ・成長する空間を提供していて,非常にありがたいです(旅行先でもアナーバーでも).特に大きめの都市のchild museumはハイハイできる子から小学生まで楽しめます.アメリカから日本にきたら,その違いに驚くのではないかと思ってしまいます.日本も季節がよく,公園で遊べる時期は徐々に短くなってきているように思いますし,屋内の空間を公共ベースで充実させる施設があってもいいのだろうなと思います. 自分の研究は引き続きRHSをやっていますが,こうした研究は未来の問題を考えていることをひしひしと感じ,これはアカデミックの役割の一つであると感じています.あと,出張などで外の人と話すと,というかアメリカにいると,Assistant Professorは研究室は基本独立しており,立場は日本の助教より高いので,自分自身も(日本の助教ですが)内面的に自律へと意識がむきます. 2020/01/28 (勉強中)アメリカにおける災害対策
TRB2020やASUに行ったり,日々の生活で得られる勉強を足掛かりに,アメリカでの災害対策を少し勉強してます.まず,日本ではなじみの薄い湖による浸食被害についてですが,温暖化の影響で湖面が上昇する中で徐々に被害が出てきている.護岸すれば砂浜が失われてしまいますが,砂を運搬して,入れる対策だけではキリがない.そんな中,Urban PlanningやLocal Communityも協力して,建物位置を動かしながらの対策も進めていこうとしているようです(参考).関わっている組織も非常に複合的であり,興味深いです. ハリケーン避難では,アリゾナ州立大でハリケーン避難の研究をしているProf. MachandaniとMs. Ketutに色々と教えてもらいました.警報類はCounty(郡)ごとに出され,ハザードマップや避難所案内,災害後の調査等もCounty単位です.Pinellas Countyのサイトの中に,Evacuation Route Mapがありますが,これは日本のHazard mapに相当する内容に加えて,避難時に使うべき道路リンクも記載されています(驚き).サイトには,これ以外にもハリケーンのsimulation動画やどの避難所に逃げるべきか(公的な避難所は日本と同様に学校や体育館のようです.ホテルや知人宅に避難する場合もあります)等も細かく記載されています.何より,こうした避難の情報は郡のサイト内(の上の方に)に常設されており,重要な情報と位置づけらえれていることがわかります.また,彼らは,避難の際にガソリンが大量に使われ不足するので,その対策のためにガソリンの運び方の最適化の研究もしています.ハリケーンのカテゴリーに依りますが,10~25%前後の人はフロリダ州外へ避難するそうです.近所の避難所に移動する人もいますが,同County内や州内での避難も含めて,Countyレベルでの大規模避難になれば,大きな道路混雑が生まれることは想像に難くないです(普段の朝ピークでも混雑してますからね..).一定レベルの雨量・風になった時点で自動的に道路を封鎖するとのことですし,避難時の道路混雑の問題が一番の課題のようです. 州内のハリケーンの災害復旧では,交通関連はおそらくDOT(Department of Transportation,例えばフロリダはFDOT)が中心になるだろうということでした.実際に,Emergency Support Functionの#1のTransportationではFDOTがLeading Agencyとなっています(参考).事前からの準備の話はこちらなどにありますが,車社会なので,道路上のdebrisの除去や電気の再供給と予算・補助金の話がメインのようです.なお,ハリケーンの被害は,フロリダ州・テキサス州・ルイジアナ州がトップ3だそうです. また,水害関連では,自宅購入時は立地場所による洪水保険加入が義務付けられています.そのためのflood mapをFEMAが提供しています(こちら).一度作成された後も,周辺環境の変化によって,再作成のプロセスがあるそうです(参考).インフラ,河川,過去の履歴などを元に検討した上で,communityも含めて更新・作成の必要性を確認して,Flood mapの作成を完成させていくそうです.住宅保険に関わることなので,地元住民を巻き込んでやっていくフェーズが必要で,その中で実リスクを認識してもらうことができるのでしょう.作成された地図は,上述のサイトに住所を打ち込むことで確認できます.同様に,災害対策を踏まえて,最低限満たすべき建築コードを示すサイトもあります.元々,街中での火事対策から始まったとのことですが,洪水も含めた様々な災害や健康維持のためのcodeが提供されています.※どうやら,日本も住宅購入時に水害リスクを説明することを義務付ける流れのようです(参考). 津波のリスクが高いのは,オレゴン州になります.こちらのサイトに "When they understand the vulnerabilities, they can look for ways to improve evacuation, and implement land use strategies to improve community resilience."とあるように,教育・避難と土地利用の両面からの対策が基本となっています.ハザードマップは,避難リンクや方向,避難所を示した上で,地震発生時にいた場所に応じてどのくらいの速度で走ればいいのかを色で表しています.津波が来るまでの時間がわかっても地震からの経過時間はわからなくなりやすいです(普段の生活でもあっという間なので).「地震が起きたら,この速さ以上で走れ」を示すのは,わかりやすいかもしれません.上記のサイトの3番目は"Tsunami land use resilience measures"です.避難とLand Useを組み合わせて対策することを志向しています. ハザード・避難の示し方,土地利用との連携,住宅への関わり方等,参考になりそうです. 2019/10/25 アナーバー生活II(9月~10月)
9月に新年度が始まり,週に1回,授業としてDr. Yinが企画運営しているNGTSセミナー聴講しています.基本的には学内の研究者(Civil Engineering以外にも交通心理学やOR系の学科があるので候補者はたくさんいます)や博士学生,近くの大学の研究者が1時間弱のトークをしています.加えて,1セメスターの中で2人(今セミスターはProf. Ouyang, Prof. Mirchandani)はDistinguished Lectureとして,遠方から招待して,Lectureをしてもらっています.また,せっかくから遠くから来ているのでということで,Dr.陣やPh.D candidate陣でその日は入れ替わり立ち替わり,Discussionやら雑談やらをする時間を設けてもらって,充実した内容でした.また,来週はProf. Osorioが別のセミナーで来る(学会の打合せと兼ねて?)ようで,学内にいてもなかなか刺激的です.交通系以外も同様に定期的な研究セミナー(学生向け)が多く,修士や学部から研究と見聞きする機会を創出しようとしているように感じます.(一方で実務家の人のセミナーシリーズもあります). ミシガン大の研究室は大講座型で,Prof. Yinの主催する研究室は,博士学生4.5人+中国からの交換博士学生1人+ポスドク1人と小規模です.基本には,奨学金型がほとんどというよりも,プロジェクトに紐づいた研究が博士学生には多そうです.このあたりは日本に近いように思います.共同指導のシステムがあったり,OR系の学科との連帯が強かったり,1年後に博士学生が来ることが既に決まっていたり,お金の使い方が緩やかだったり,というのは,やりやすいようなシステムになっているかなと思います(RAをしている学生もいて,その場合は忙しそう).アカデミアへの就活はなかなか大変そうです.博士最終学年やポスドクの人は,それにほとんど時間を割かれている感じもします.ポスドクの同僚は,博士学生がこの10年くらいでどんどん増えてきている一方で,アカデミアのポストはそれほど増えていないせいではないかと言っていました.ただし,日本と全く異なる点は,実務側も博士人材を求めている点でしょうか.新しい物事を次々と取り入れていく社会になるためには,新しいことが(技術的にも)できる人材・ロジカルに考えられる人材を大学から社会に送り出すためには有用に思います.競争社会で厳しくもありますが..(アカデミアに残ってもtenure-trackの昇進条件も厳格ですし) また,9月にUMTRIが中心となって,運用しているM Cityを見学しました.自動運転車を走らせる教習所規模の施設が学内にあるという感じです.他に自動運転車自体は近くのHighwayを中心に走らせた走行実験をしているようです.自動運転車の開発は当然自動車会社中心なので,開発自体を大学がやろうというわけではありません.ただし,単に自動運転の技術があるだけでは社会に実装されていかない,実際に実装されるときにどういった問題が起こりうるのか,社会実装に耐えられる法律・制限はどうあるべきなのか,を政府だけでなく,研究的なアプローチで考えていくために,というスタンスがあるように感じます.それが,例えば,自動運転社会・システムの中でHuman Factorがどう働くのかといった研究に繋がっているようです. M cityのような機会や上記のセミナーや研究室のゼミなどで感じるのは,新しいTechnology (Ride sourcing, Drone, Automated Vehicle, Platooning etc.)を導入することに躊躇いがないということです.それは社会もそうなのだろうし,もちろん大学もそうです.日本ですと,様々な問題がまず頭に持ち上がり,それを潰していく又はなかなか変わらないという感じになってしまいがちです.一方で,アメリカは,おそらくTechnologyが社会を豊かにするということを起点としていて,研究側は,そのTechnologyをどううまく社会システムの中に組み込めるかを肯定的に検討しているという印象です.実際にUberもAirbnbも体験すれば,その便利さ(=今までの苦労をTechnologyで埋めているという感覚)を実感するわけで,確かにTechnologyで豊かになっているのだろうなと思います.(日本が渋滞対策のための料金の柔軟な変更の法令準備さえまだ出来ていないということを考えると,学も民も官も変わっていかなければと思います)
※10月もそろそろ終わりますが,秋も後半といった様子で,木々も色づいてきています.コート必須です.
(M CityのAV車と紅葉)
2019/9/30 Software2.0
n月刊ラムダノート vol. 1 No. 2の#2 計算機科学から見たディープラーニング(今井健男)を読みました.Software 2.0のアイディアは,「テスラのAI部門の責任者(Director of AI)であるAndrej Karpathyによるブログ」が発端で,広がっているそうです.DNNのようにモデルの柔軟性をできる限り高めたモデルを使ったうえで,データにフィットさせる結果を得るというフレームワークは,これまでモデルを扱ってきた人に(下手するとデータを扱ってきた人にさえ)腑に落ちづらい形でした.しかし,Software2.0の考え方(詳しくは↑の記事かブログ)に照らすと腑に落ちる部分は多々あります.大量のデータがここまで出てきている中で,”予測精度を向上させるため”に,モデルの形を"事前に"与えることは足枷であり,モデル自体を探すアプローチをディープラーニングが採用していると捉えられるということでしょう.先日のWSでも,モデル式自体をフォローすれば予測が当たるかというとそんなことはなく,理論は制約程度に使っているという話がありました.このあたりは実務に携わっているからこそ出てくる考え方かなと思います.(DL/AI系こそまさにそうですが,実務的にどんどん進んでいるからこそ,学術的にも面白い工夫が出てくるのだろうなと感じます) こうしたフレームを理解した上で,なにをデータとして与えることで,なにを予測できるのかを考えていく時代になりつつあるのかなと思います. 2019/9/20 交通短期予測と次世代交通マネジメントに関する国際WS@立命館
力石先生,塩見先生による交通短期予測と次世代交通マネジメントに関する国際セミナー@立命館大学衣笠キャンパスに参加・協力しました. - 短期予測とマネジメントの組合せを目標に,力石CARTは活動しており、CART自体も研究から実務への現実的な繋がりを想定したファンドであり,今回はオランダでFileradarのChris van Hinsbergen共同CEOとtudelftと兼任でフィレダーダにpart-timeで参加しているAdam Pel准教授にオランダからはるばる来てもらい,WSを行いました.
- Fileradarでは,ロッテルダム都市圏の道路マネジメントやトンネルの混雑緩和@Maastunnel, Rotterdam,ストリートスケールの信号制御@'t Goylaan st., Utrecht などの実務を展開しており,その具体の話が聞けたので,なかなか面白かったです.都市圏レベルのマネジメントではループディテクターなどの種々の交通観測にTwitterなどのメタデータを加え,履歴データを管理しmその履歴データを元に交通状態予測(主に混雑下や事故後)を行なっているそうです.紆余曲折あったようですが,現在は類似状況のみの履歴データを取り出し,ディシジョンツリーを構築し,理論的にありえない状態を除外した上で,交通状態の確率的予測を算出するという仕組みだそうです.
- ChrisがPh.Dを取った後に同時期に学位をとった同級生と会社を興し,10年経っており,基本的にはこのシステム・ソフトウェアを売るという営業形態とのことです.他にもダウンタウン周辺の交通渋滞が激しいリンクの改善のため,レーダーによる車両観測をベースに,10sec単位で信号を制御するというマネジメントの話も聞かせてもらいました.Chrisは,「研究上は,ほらできるよね、こうすると改善するよね」といったことと,本当の実務への展開との乖離に疑問をもち,会社を始めたそうです.実際に観測データの最大限活用した信号制御や類似データのみによる決定木による交通マネジメントのアプローチは,実務に特化することで出来上がった形のように感じました.国内ではなかなか聞けない実務の話で,論文にも当然書かれてこない話ですので,非常に貴重だったなと思います.
- また,京都での開催でしたが,色々な方面から聞きに来ていただけて,ありがたかったです.
- 翌日に伏見稲荷に行きましたが,自転車での移動を希望され,やはりオランダ人は自転車が好きということを実感しました.
2019/9/1 アナーバー生活I(6月~8月)
アナーバーに来てから,3ヶ月経ちました.最初の頃は日々新しいことの連続で苦労もありましたが,だいぶ落ち着いてきました.おかげさまで,毎日研究をしています. - こちらで参加させてもらっている研究プロジェクトに,Ride-hailing serviceを対象とした研究があります.システム全体の分析として,供給量と需要量に応じたサービスレベルの推移のモデル構築とDiDiの実データによる実証分析が大きな柱かと思います.メインは,この需要と供給のカーブの話.加えて,単純な客とドライバーの量の評価だけでなく,ドライバー行動や客の予測を改善することで,"キャパシティ"を増やせないかということに繋がる実証分析を行っています.僕が関わっているのはドライバーの行動予測のパートです.UberもDiDiもドライバーは(ほぼ)プロ化していますが,個人事業主なので,どう動き,どう拾うかは個人に委ねられています.一方で,Ride-hailing serviceの空走による都市内混雑は社会問題になっており,効率的なドライバー供給は考えなくてはなりません.これは自動運転時代になっても変わりません.まだ,ドライバーの行動分析をしている途中ですが,ドライバーの行動予測をベースに変化を促すことで,より効率的なシステムとするためのミクロスコピックな手法の構築を目指します.
- 力石先生がやっている新道路プロジェクトに参加しており,ICMC@Kobeでの発表にむけ,単純な時系列データのTensorflowを使った交通需要予測を行いました.この本を勉強しながら,ちょっと改良し,というかなり基礎的な内容です.DLはかなりブームですが,フィッティング・当てることに関して特化しており,ビジネスにも繋がるため,多くのエンジニアが取り組んでおり,そのライブラリ・アルゴリズム改良のスピード感は目覚ましいものがあります.適用分野・対象は次々と拡大しており,,,交通分野として,公共的な施策・介入を考える上では,単なる予測では事足りず,いかに適用可能にしていくのかを考える必要はあるでしょう.
- あとは,以前に行ったIL-JP-WS@Tokyoで指摘された課題も反映等を行いつつ,世帯間インタラクションの影響を考慮した避難開始選択とインタラクション形成モデルのペーパーもほぼまとまりつつあります.細かな設定や結果の確認(説明変数の有意性)などを潰していくと,時間がどうしてもかかってしまうのが課題.もともと,潰し切った結果を持っていればいいのですが..
- ということで,なんだかんだで時間のかかる計算に取り組むことが多く,高性能サーバマシンに頼ることも多くなってきました.導入・設定となかなか時間がかかりますが,運用を開始してしまえば,思っている範囲内では実行でき,20job同時計算できたり,Laptopへの発熱ダメージの心配もしなくていいので,便利です.
- このように計算が多い中で,いつも悩みのタネだった,C++での最適化計算時の歯車の再設計問題を克服するため,ライブラリ導入にも取り組みつつあります(今度は諦めずにうまくいかせたい).とはいっても,微分は自分で与える必要があるライブラリなので,どのくらい有効かわかりませんが,探索はスムーズに色々な手法を試せそうです.こうなってくると自動微分したいとも思います.
6月にアナーバーに引っ越して,3ヶ月経ちました.最初の1ヶ月は,AirBnB住まいで,やや子供を遊ばせづらく&(子供の)時差ボケ,また家探し,住民登録,車の購入とバタバタでした.車と新居が同時に6月末に手に入ってからはだいぶ落ち着き始めました.クレジットカードや車免許など,全てでhistoryが重視され,それにより料金や信用がかわる国ですので,最初は日本人コミュニティに頼って,色々↑入手しました.同じ国ということで信用されるというのは,日本にいては感じることのない不思議な感覚です.車を手に入れるまでは,買い物や手続きにもUberで移動でした.アプリで呼べるので,素直に便利です.いちいち電話して,乗る場所を伝えて,さらに行き先を伝えて,,というのは大きな手間です.また,AirBnBでキッチン付きを事前に借りられたり,他にもBusの到着時刻,アプリでの駐車料金支払い(epark),キックボードのシェア(spin)など,さまざまな場面での交通ICT活用により,だいぶサービスレベルがあがっています.管理コストや乗せる側の手間,移動の(非可視的)障壁の軽減といった多くの波及効果がありそうです.豊かさを主観的な見立てで比べることは難しいですが,こうした便利さが豊かさに繋がるだろうといえるだろうし,少なくともアメリカの便利さが進んでいることは間違いなさそうです. 2019/5/13-14 スマート・プランニング実践セミナー@金沢・富山・福井
- 5/13-14と富山市、福井市、金沢市で行われたスマート・プランニング実践セミナーに参加してきました。北陸新幹線の整備をきっかけに街への活力が生まれ、ダイナミックに展開している様子やその展開にあたってきめ細かな仕掛けをもつ空間ができている様子がよくわかり、大変勉強になりました。
- 新幹線整備にあわせた駅の再開発にあたり、事業者間への屋根の整備、地元木材を利用した待合広場、駅から広場の見え等、細かな設計が施されていました。また、駅と昔からの市街地の関係性で都市の骨格が規定される中で、商店街と集える広場の整備、プラスワンの大規模施設をうまく繋ぐことでいかに回遊性を担保していけるのかは興味深い問題と思いました。
- 一方で、通勤地や居住地などの生活を担う周縁へいかに浸み出して連携・向上させていくのか、都心回帰ともいえるマンション・ホテルの高度利用をいかにうまく適応できるのか等、考えることは現場では尽きません。
- 福井は初めてでしたが,非常にコンパクトな街にdeepな商店街があったりと,面白そうな街でした.今後はもう少し長く滞在してみたいです.
2019/3/18 シンプルな理論の展開と若手研究者・博士学生 (Ann Arbor付録)
- 理論はよりシンプルにシンプルにしたほうが価値があるというのは交通分野の研究でも息づいているわけですが、一方で、(若手が)現象の理解を深めつつ、悩みながら取り組んでいると、あれよこれよと色んな肉付けがされてしまいます。それを客観的にみる共著者(ボス)が歯止めをかけてシンプルに戻すことのせめぎ合いで、進んでいく研究は多いと思います。
- とはいっても、2020年も近づこうという昨今、シンプルな式だけで研究が完了することはきわめて稀で、一見シンプルな式を解くことを目的としたアルゴリズムであっても、労力はすごかったりして、そのために若手は苦闘するといった構図も同時に存在しているのではないでしょうか。そうでもないのかな。日本ではもうちょい博士学生は自由でしょうか.
2019/3/17 計算技術による適用可能性の拡大と創造性
- 神戸大在籍時はポスト京プロジェクトに参加していて、大規模計算、高速計算の世界に少し顔を覗かせました。博士研究の中で、計算の高速化のためにC++を自己流でやっていただけでしたが、それを起点に色々と学ばせてもらいました(links)。高速計算のためにはOpenMPやMPIといった並列技術の話が一歩目となりますが、いくら計算機が頑張っても、結局は良いアルゴリズムを作れるかどうかかと思います。とはいっても、なぜ遅いのか早いのかの原因がわかっていなければ、良いアルゴリズムも作れないわけで、そのためにはやはり計算科学・計算機科学の知識や技術が欠かせないということになります。最適化計算だって、非線形になった途端に微分/Particalをどうするのかが実装面では避けられず、そのための技術や知識(ヒューリスティクス)をコツコツと蓄積していく必要があります(とはいってもそれを乗り越える数学が現れたりもします)。
- 僕の心にとどまっている話に、“キックの技術がなければ凄いパスが出せないのでなく、そもそもその凄いパスを思いつかない”という話があります(たしか、中村俊輔とオシムに絡んだ話だったと思いますが)。計算に当てはめると、要するに、計算する技術を持ち合わせていなければ、(効率的・高度な)アルゴリズムを思いつきえないという事かと思います。これはおそらく正しくて、よいアルゴリズムや速い計算コードを書くためには、少しずつ自分で練習(だいたいOJT)して、工夫を覚えていくことやよりよいコードをみて学んでいくことが必要です。
- 一方で、交通系の研究者の人と話すと、(交通系の計算であっても)計算を早くする仕事はComputational Scientistの範疇ではないか、Matlabで書いて解ければいいのではないかという議論にもなります。これは微妙なところで、やはり現実的に適用を行う大規模実装ではそうした専門家の参入を望みたいところですが、一方で、研究上でのアルゴリズム開発に関しては、上に書いたように、それなりの知識は必要なのかなと思います。(もちろん、アルゴリズム開発の知識が単純にコードを書きつづけることで身につくわけではありませんが。)
2019/3/16 @ Ann Arbor
- 助教というと、日本でいうと助手の名前が変わっただけというイメージで、ボスを補助するという印象でしたが、蘭もそうですが、アメリカはより自立的な立場です。どんどん博士取得者が増えている中で、Assistant Professorの倍率が高くなり(100倍以上という話も、)、そのようにみられます。日本の場合は大学によって、小講座だったり、大講座だったり、と状況は違いますが、Dr.をとったあとに(グローバルにみて)どうみられるか、求められるか、なにをするべきは、実はあまり変わらないかもしれません。
- というのも、ポスドクの人が、assistant professorのインタビューの練習に参加して、色々とダメ出しを受けていて、、今までtransport safetyをやっていたがやりたくないので新しいテーマの話をしたものの、そもそもどんな研究がやりたいかを長く話しても仕方ない。departmentにいかに貢献できるかを今までの研究とこれからの研究で示し、さらに研究そのもの以外の側面での貢献を説明しなくてはならないということを議論しました。faculty memberの一員として何ができるのかは確かに一つのポジションを得るにあたって大事であると同時に、そのためのoverviewを持っていかなくてはならないんだろうなと思いました。
- あと、ちょうど滞在中はph.Dのリクルーティングウィークに少しかぶっていました。博士志望の学部四年生がいくつかの大学をまわって、興味ある大学を選ぶそうです。一旦入ると五年ほどはいることになるので、たしかに街、大学、学部、研究室の人と十分話せる機会は必要かもしれません。
2019/2/23 @ Ann Arbor
- 多くの方の厚意あり,University of MichiganのLIMOSに1か月滞在しています.慣れない場所で,あっという間に過ぎてしまうと思いますが,濃密に頑張ります.今日は研究室ゼミで,2件の発表あり,一つはPosDocの方のJob Interview (40min talk) のリハーサルでした.といっても,わりとresearch fund向けのプレゼンのようになり,要再構築というコメントが多かったのでしたが,,土木学科の人たちに向けて何を話すべきか(そんなに研究詳細を伝えるような細かいことをやっても仕方ない)を考えたときに,自分がこれから何をやろうとしているのかを伝え,中や外の人とどんなコミュニケーション・コラボレーションをとって何を学科にもたらすのかを伝えなければいけないという議論が主でした.個別の(研究)課題に陥りがちで,受け身になりがちな自分としては,今の場所の甘んじることなく,先を見据えてやっていかなければと考えさせられました.
- 金曜の夜は21時を過ぎるとぐっと静かです.
2018/11/4~11/7 : Intelligent Transportation System Conference 2018 @ Maui
- IEEE ITSC (Intelligent Transportation System Conference) 2018@Mauiに参加してきました。この学会には初参加で、かつ、災害や避難とついていないセッションでの国際学会での発表も初めてのような。。
- DLV(Driverless Vehicle)の話が各地で話題に上っているご時世に合わせて、非常にDLV関連の発表が多かったです。計画的な視点よりも技術的な開発に寄与するという視点で、Connected VehicleやRoadsideからの観測、Motion Planingといった内容が注目を集めているようでした。特に、車線から外れた軌跡を車両が取るときの挙動についても着目されているようで、意外でした。どのようなことが研究課題かをインプットできるという点でなかなか貴重な機会でした。
- Deep Learning(DL)やReinforcement learningもそこそこありました。このあたりの手法、特にDL、については、適用が中心なので、議論が深まるわけではないですが、丁寧な発表も多く、多くの場面で使われてきているようでした。データを使った予測の枠組みではDLがかなり表に出てきていますが、
- 一方で、good understandingに向けたBigData & Data Miningは影が薄くなってきているようでした。なかなかこれという決め手は、データや事象ごとに取り組みが必要な内容であるため、出てこないためかなと思いました。パラメータ推定や最適化は変わらずやりつづけることですが、ITSCのような交通システムの議論からは少し離れているのかもしれません。
2018/2/27~3/16 : Workshop Series
- ワークショップシリーズということで,2月末から3月中旬にかけて,2/27~3/2 イスラエル工科大ー東大羽藤研合同研究WS, 3/6 Prof. Bekhorのレクチャー, 3/7 Prof. Bar-Geraのレクチャーを含む科研S(代表:桑原教授)WS, 3/9 SIAM PP18でポスト京プロジェクトの企画セッション, 3/10 ポスト京の国際WS, 3/16 ポスト京の成果発表会に参加していました.
- 合同研究WSは,主な参加者が羽藤研とTechnionチームに限られていたこともあり,少数で自由なゆったりとした議論が展開されました.また,初日に気仙沼と陸前高田へ現地見学したことがあり,避難行動で一体何が起こっていたのか,何が起こりえるのかといったことまで,共通認識を持った中で,議論することができ,とても良かったです.Haifaでも山火事による災害が最近起きたそうで,リスクの不確実性とその認知過程,pick-up行動をどうしたらいいのかという問題意識を持っているようでした.なお,期間中のパラメータ再推定も試みましたが,うまくt値が出ませんでした.
- Prof. Bekhorの発表はわりと印象的で,いかにシンプルに交通ネットワークの現象を捉えられるのかを考えており,グラフ理論,均衡配分の近似,SOとUEの比較といった昔ながらの手法ながら興味深い内容でした.個人的には梅田で発表してもらった二段階計画問題で下位問題の均衡配分の結果を短時間で得るためにネットワーク形状を変えた配分結果から近似的に得るというのが面白かったです.厳密に計算できること,早く計算できることも重要ですが,シンプルに近似する,そしてどの程度の精度があるのかを知るというのは一つの道筋だと思いました(※ Haas & Bekhor(2017)).
- Prof. Bar-Geraは,熊本大にもお世話になり,合計で10日間ほど滞在していただきました.研究の話をするととまらない,理論を細かく突き詰めている研究をやっているという感じで,印象的でした.exact FIFO(※ Bar-Gera & Carey (2017))の話を新幹線の中とホテルのロビーで2回聞きましたが,そこに着眼するのは,僕では絶対にないわけで,そういう話をじっくり聞くのもありがたい機会でした.一方で,メンテナンスの最適化やHigh-Occupancy VehicleのTel-Avivにおける実務化プロジェクトといった研究テーマもあり,どっちもできるのがこの分野の研究者のいいところだなと思います.Tel-Avivの海辺に住んでて,Negevにある大学まで1時間半くらいかかるそうで,週に2,3回は研究室に泊まっているという話を聞くだけで,充実して楽しそうなのがわかります.
- ポスト京のWSでは,相変わらず,構造や地震,津波の人との合同国際WSは難しいなという印象を持ちました(英語だと特に).SIAM PP内の他のセッションもテーマの大きな隔たりはありながら,共通するのは計算手法だけという中でやっているそうで,手法や聞きどころがわかってくれば,もうちょい楽しめるかもしれません(このあたりは非常に細かいので説明しない研究発表も多いですが).成果発表会を聞いていても,計算手法や高速化の工夫,基本的な式展開が共通言語で展開されているのだとは思いますし,このあたりはだいぶ理解できるようになってきています.
- 成果発表会ではパネルディスカッションに参加しました.フロアから質問が出ていたのでわりと盛り上がっていたようです.計算量を増やしていくなかで不確実性を捉えていくことができるのではないかという話に質問をもらえました.災害時の交通は交通工学の中ではまだ山とも海ともつかないもので,なかなか共通理解や研究の進展は薄いのですが,行動規範の理解・モデル化とともに,不確実性の被覆ができるようになると,なにか一歩先に進めるのではないかと思っています.
- Prof. ToledoとTechnionからの学生さん含めて,イスラエルからのお客さんとご一緒していたわけですが,敬虔なユダヤ教徒(全体の20%くらい)とそうじゃない人では生活習慣・食べ物の差は大きくあるようです.Prof. Bar-Geraは日本だとなんでも食べられる(イスラエルだとレストランが敬虔な方を意識して出されるメニュー自体を自主規制する場合が多い)から,試しになんでも食べてみたいというタイプのようで,アナゴの天ぷらも試していました.串カツとしゃぶしゃぶがお好みだったようです.
2018/01/21 : 第57回土木計画学研究発表会(ip57)の企画論文セッション 6月に東工大で行われるip57の企画セッション「行動モデルの展開 -理論と応用-」を立てています.論文が集まれば開催される予定です. 今回は,土木計画学大会運営小委員会からの提案を受け,カジュアル・イブニングポスターセッションとなる予定です.ip57の新規の企画として,ざっくばらんに深くじっくりと議論できるようにという趣旨のもと,飲み物や軽食を交わしながらのややカジュアルな雰囲気の中でやろうというポスターセッションです.他の交通ネットワーク,交通流のセッションと並行して行われる予定です.どういう学会であれば面白いとかためになるとか色々とありますが,発表者や聴講者の方々がその研究をより研げる機会になるよう,やっていきたいと思います. 2017/12/13 : 坊ちゃんセミナー@松山 愛媛大で行われる坊ちゃんセミナー第5回で発表してきました.神戸にきてから,やっている内容です.コメントでももらいましたが,復旧期の交通の計算を目指しており,大きな問題であり,同時に基となる研究が少なく,悩みの多い研究です.観測が優れてきている時代の中で,災害・突発事象等の稀少事象を予測し,備えるためにどうしたらいいか.不確実な事象を幅を持った結果を得ることで抑えることができないかということを考えています.2018年に色々と収穫できるといいのですが.. あとは,若いうちはやり続け,それを年齢を重ねてもやりつづけること.質問にはきちんと折れずに答えること.というあたりを忘れずにやっていきたいと思います. 2017/11/07 : Dr. Pel セミナー@六甲 TU DelftのDr. Adam Pelを迎え,”Making route choice and traffic flow models more realistic, but not more complex”というタイトルの発表をいただきました.前回の2014年7月に発表をしてもらった際は,彼がD論から行っている避難関連の研究の話をしてもらいました.今回は,経路選択とDynamic Network Loading (DNL)について,基本的な内容から最近の研究の話までをしてもらいました.経路選択は,災害時は動的にネットワーク状態が変化するので逐次型の経路更新過程が必要になるが,経路変更のための労力が必要であり,こうした慣性効果のため,単なる効用を比較しただけでは再現できないという話でした.DNLでは,Capacity Dropを考慮したFundamental Diagram(FD)のモデルを紹介してもらいました.このモチベーションは,災害時は混雑が多く発生するが,線形のFDでは混雑の悪影響が過小評価されてしまうので,なるべく適正に評価したいというモノです. 避難という現象を対象に研究すると,単なる適用になりがちですが,行動モデル,交通シミュレーション,最適制御と行ったりきたりする中で,こうした気づき,それを理論面での発展に繋がるという点は非常に面白いです.今回の来日の主目的は復興の現場の見学で,他には最近はHPCのプロジェクトも抱えていたり,リアルタイムマネジメントのベンチャー会社にも参加していたりと,多方面のことを学び考えながら,交通分野の中で色々なものを積み上げているということで,なかなか刺激的でした. 2017/11/03 : 土木計画学秋大会@盛岡 ip56で「災害時の交通行動」というセッションのオーガナイザーを行いました.国交省の松本氏から「道路の通行規制がネットワーク全体の自動車交通に及ぼす影響の定量的分析」,名古屋工業大の西田氏から「豪雨災害時におけるプローブデータとシミュレーションによる帰宅交通対策分析」,東京大のDharmarathna氏から「Unsteady Travel Behavior in Major and Minor Scale Disasters」という三件の発表をいただきました. その場ではうまくまとめられませんでしたので,まとめとして考えたことを少しだけ書きます.まず,三件は「災害時の」交通行動と一括りとなり,特に車の経路選択や経路所要時間に着目した研究でした.ただし,災害時といっても,その内容は時間軸・ネットワーク密度という点で対象は異なっています.時間軸は,豪雨中(または直後)の行動と,被災リンクが明らかになった被災からやや時間が経過した後の行動という違いがありました.後者は情報取得済みで被災リンクにより生じる迂回距離を議論の対象とし,前者は情報未取得により生じる経路選択(と混雑)を計算の対象としています.前者の研究にあたる西田氏は情報未取得者が通行止め区間と知らずに経路選択することで生じる混雑を指摘し,Dharmarathna氏は災害時混雑化のMyopicな経路選択行動の存在を実証しています.また,後者の研究発表を行った松本氏からは大雪時には通行止めの情報提供のタイミング(早期化)が重要であるという話題も提供いただきました. こうまとめますと,災害時の経路選択の再現には情報取得状態の仮定が非常に重要であることをそれぞれの見方で示していただいた三件であると思います.しかし,情報取得が重要であることは明らかですが,その先に進むのはなかなか難しい問題です.個人的には,基本的には楽観的(混雑を想定しない)な経路選択者が多いのではないかと思いますが,この点についてはまず実証から必要なのでしょう(楽観を仮定して計算するとなぜ楽観なのかとすぐ突っ込まれてしますので).個人的には楽しいセッションでした. 2017/10/14 : 「災害と人の行動」セミナー@野田・運河 東京理科大の野田キャンパスに行って参りました.夏の学校の裏で,東京理科大学理工学研究科横断コース「防災リスク管理コース」第一回セミナー「災害と人の行動~避難に関わる数理モデルとシミュレーション~」で「避難開始選択の行動モデル -将来効用と他者の影響-」というタイトルで発表しました(博論の内容が中心です).学部間連携型のセミナーということで,数学科の方もおり,その視点からすると認知を取り込んだモデリングとその実証というのは,サイエンティフィックじゃないようなというコメントをいただいのが(ポジティブな意味で)印象的でした.理論モデルをベースに現象観察だけでは見えないものを追いかける先になにかがありそうと感じながら,僕らは日々研究をしているということなのでしょう.それは,数学家の目から見ると,現象依存であると見えるのかもしれません. また,夏の学校では,参加9年目(くらい)にして,初のネットワークモデラー系の研究室が受賞となりました.おめでとうございます. 2017/07/01 : IHPCSS@Boulder 高地トレーニングで有名なコロラド・ボルダーでのIHPCSSに参加してきました. 参加者側での夏の学校への参加は久々でしたが,世界から見たHPCへの視点は,また日本とは少し違っており,勉強になりました.内容は,並列化の基礎コードの演習,HPC技術をうまく使うためのツール(プロファイル,可視化)の解説,応用分野や研究開発体制などのレクチャーでした.参加者のバックボーンとする分野は異なり,共通点はHPCであること,またPh.D/PostDocを対象としていることもあって導入的な内容が多かったです.Mentoringセッション等も含めて,最新のツールやC++/C/FortranやBigDataへの捉え方など,HPC分野の色々な話を聞けてよかったです.また,最先端の研究も大切ですが,ユーザビリティや最初の一歩の障壁を下げて,分野に関わる人を増やしていくことを大事にしているんだなと感じました. 自分の研究分野をtransportationと説明すると,何の?(quantum?)と聞かれる会でしたが,インタラクションの量や計算速度,グラフなどをうまく説明すれば,なんとなくわかってもらえるかもという印象も得られて,よかったです.ちなみに,夏の学校恒例(?)のcontestの評価対象は,当然ながら秒数のみでした.
紹介された主なソフト:3D Visualization Paraview, Profiler VI-HPS & ParaProf & Cube, Documentation tool Doxygen 2017/06/15 : ip55@松山とiccs2017@zurich プロジェクトの中では災害復旧期の交通需要モデルの構築を主に担っており,関連して次の2件の発表に主に関わりました. 1つ目は,OD分布をいかに構築するのか.観測が増え続ける現在では,観測断面交通量等を用いたGLSモデルによるOD分布の構築の精度が高まっています.しかし,そうした断面等の観測を前提としない状況では,伝統的な四段階推定法に則れば,発生集中交通量のみがインプットとなります.これは,古くはWilsonのエントロピーモデルから取り組まれている問題ですが,すぐに断面交通量で補正するというモデルがでてきてしまっており,発生集中交通量のみからOD分布を得るというモデルは,あまり研究されていません.しかし,将来予測や災害復旧期のことを想定するにあたり,そうした断面交通量などの観測結果を用いることはできません.と同時に,予測では,現在の目的地の魅力度や旅行コストからも一定の変動が生じうることを見込むことが必要でしょう. そこで,目的地選択モデルの効用項として,旅行コストと目的地の魅力度と,出発地iと目的地jの間に生じる観測できない空間変動に因るコストを加えています.この空間変動コストは旅行コストの対数に比例する形とし,その比例係数は,(未観測変動なので)乱数から与えています.乱数で与えるためにはモンテカルロ法を用います.そのため,最終的にはOD分布の集合を得ることになります.OD分布の未知数は,各ODペアの交通量であり,ゾーン数×ゾーン数です.対して,インプットは発生集中交通量であり,ゾーン数×2です.この既知の数と未知の数の差を考えれば,一つの表のみで予測しようというのは明らかに困難であり,集合をもって,予測とするというのは理にかなったことではないでしょうか. 2つ目は,他者相関を考慮した選択モデルにおいて,いかにローディングするのかという研究です.他者相関を考慮したモデル(Local Interaction model)では,ローディングする際に選択確率を決定するにあたって,他者の選択確率(選択)を反映する必要があります.そのため,ネットワークでつながる全員分の選択確率を得るためには,全員の選択確率を同時に決定する必要があります.最尤な同時確率を得るためには,(各個人の選択肢数)の(全人数)乗のパターンを試すことが必要です.これは,NP-hardなので,都市スケールのシミュレーションでは不可能です.そのために,既存のミクロシミュレーションで他者相関が考えられているのは,せいぜい家族内のみです.この指数式時間の同時確率を多項式時間に減らすために,他者相関を近似的に評価するという式展開を行いました. 松山での学会からそのままZurichでComputational Scienceの学会に参加してきました.分野融合型の学会であり,手法も様々なため,発表の質にばらつきはありましたが,超多次元の時のTrust Regionの探索範囲は正規分布で与えてしまったほうがよいとか,Load imbalanceを改善するために計算コストに関するヒューリティクスによる最適化を用いていたりとか,Taboo listはshort memoryに乗せたほうがいいとか,deep learningのレイヤが深い理由とか,マニアックな話を聞いてきました. 2017/06/02 : ベクトルレジスタ ARM社のHPC向けのCPUとして,ARM SVE(Scalable Vector Extensions)の話が出てきていますが,こちらの記事をみますと,ポスト京機で,現在の50倍の性能で,15倍の高効率(たぶん電力)を達成したいということだそうです. クロック数の進化は止まっていて,主記憶メモリの容量増大も頭打ちなので,2048bitまで対応できるベクトルレジスタを使うことで,一度に計算できる量を増やすというのが展望ということでしょう. この記事も詳しいですが,必ずしもベクトルレジスタを目一杯使わなくても計算できるようになっているというのがARMアーキテクチャのウリだそうで,すが,当然早い計算を行うためには目一杯まで使ったほうがいいのでしょう.ベクトルレジスタに乗せる乗せないとのはC言語レベルでは書ききれないわけで,コンパイラ頑張って!..という簡単な問題ではなく,そもそも長いベクトル計算を持つアルゴリズムにすることが求められるということです.「ARMの64ビットのライセンス供与先企業は全て、SVE技術を使用することができる。」(出典)ということで,一般向けのサーバでもSVE関連を意識すると早くなる時代が来るのでしょうか. 先の記事では,もう一つ,プレディケートレジスタというあまり耳にしない単語が出てきますが,「制御ループに関するさまざまな判断を管理するために使われる」そうです.このレジスタの存在は電力効率と関連するのでしょうか(?).ベクトルレジスタとの組合せで必要なのでしょう(??). 2017/05/21 : 並列計算 一口に並列化といっても,様々なスケールのものがあります.基本的には,パイプライン処理による時間並列とパラレル処理による空間並列の二つに分けられます.現在では,計算にあたっては,どちらもコンピュータの力で図られています.そうした中で,MIMD(Multiple Instruction stream, Multiple Data Stream)の計算を行うことができるマルチコンピュータ(プロセッサ)を使うということが主流になっています. 時間並列では,一つのプロセッサで処理を少しずつずらして,時間的に分割して計算をすることで高速化を図ります.時間並列を進めるため,パイプラインの段階数を増やすことで速度向上も見込めますが,その際にはレジスタを効率的に使う,または数を増やすことが必要になります.単に,パイプラインの段階を増やすだけでなく,1命令で多数の要素の計算を行うことができるようにするのがベクトルコンピュータ(ベクトルレジスタ)です.一度に計算する要素数を増やすことで(ベクトルの計算をする),ループの回数を少なくします.思った通りの高速化のためには,ベクトルレジスタの長さにあった計算を行えることやデータへのアクセスがスムーズに行える必要があります.計算対象のベクトルが長いほど,ベクトルコンピュータの有利性は増します. 空間並列の話は,OpenMPやGPGPUをイメージするとわかりやすいですが,複数のプロセッサで計算を分けることで,高速化を図ります.GPGPUはこうした空間並列の計算で性能を発揮します.計算対象データの依存関係がなければ空間並列性の高い計算をすることができ,要素プロセッサの多いGPUには有利です.ただし,主記憶とGPUが同一基盤であるためメモリ容量が限られる点や,Graphics Processing Unitであり,計算結果を戻す方向のデータ転送がネックとなりうる点が課題です. そうした中,命令レベル並列(コンピュータ・コンパイラの機能を生かした並列化)のためのトランジスタや周波数の増大(に伴う電力や熱の増大)やパイプライン処理による性能向上の限界のため,陽にプログラミング上で並列化を行うことで高速化を行うマルチプロセッサ(コンピュータ)の時代になっています.すべてのプロセッサ間で共有するメモリはなく,ノードコンピュータ間でデータ通信・同期を行うことを前提としており,高並列が行いやすいコンピュータであるといえます.そのデータ通信・同期のための標準規格がMPIです.MIMDコンピュータでの効率的な実行のためには,マルチコアでの計算を可能とするアルゴリズムの開発と,上述したような高速化と組み合わせた計算コードが必要となります. あまり,うまく整理できませんが,,とりあえず,進んできた流れは分かった気がします.(参考:コンピュータ・アーキテクチャ) 2017/04/30 : 計算と交通工学 2013年に,柳沼さん斉藤さんとこういう発表をしたことがあったのですが,いまやっていることとけっこう関連しています. 前半はProbit modelと計算機科学の話.Probit model再来は計算機性能の向上とアルゴリズム改良が大きく寄与しているとまとめられています(ただし,時代は移り,CPU性能の頭打ちから並列化時代へといったタイミングから,主記憶メモリの容量増大の頭打ちからポストムーアを見据えてという現在になっており,キャッチアップはより難しくなっているように感じます).こうした交通分野と計算(機)科学の密接な結び付きは,後半の観測と予測の話からも暗に示されています.予測精度の向上と計算量の増大,現実的な求解のための(近似)計算アルゴリズムは,切り離せない関係にあります.また,Sundaram et al. (2011)をみると,DTAと常時観測データが相性がよいことは明らかです.ただし,パッシブデータをいかに工学・予測に載せていくのかというのは,昨今の情勢をみると一筋縄ではいかないようで,いかに個々のモデリングをきちんと組み込んでいけるのかが大事であることは間違いありません. もちろん,交通分野では,シミュレーション自体が,どれだけあっているのか,ダミー変数だらけではないのか,といった懐疑的な目を向けられているのは承知ですが,研究を工学(実務)に近づこうとするほど,大きな範囲をカバーできる計算がないと役立てられないというのは一つの事実なので,価値があるのではないでしょうか. 2017/04/16 : メモリウォール コンピュータ・アーキテクチャと高速化の話について,最近勉強を始めたところなので,メモ. 計算の高速化にあたって,わりと始めのほうに問題となるのが,命令コードの局所性,メモリの時間的空間的局所性です.記憶システムの階層構成の図(例えばここのC)のように,レジスタ・キャッシュ・主記憶・半導体ディスク(SSD)・二次記憶・周辺記憶の順に,高速・小容量の記憶システムから低速・大容量の記憶システムに移っていきます.主記憶(たいてい,メモリと呼ばれる)までが内部記憶で,この本では,レジスタへのアクセス速度は0.25~3ns,キャッシュは1~10ns,主記憶は40~100nsとされています.容量は,0.1~1KB, 16KB~4MB, 1~256GBと1000倍以上の違いがあるわけです.アクセス速度はデータ転送の速度との関わりが深く,一定量の計算にかかる時間に直接的に高速化には効いてくる.もちろん,キャッシュ上のデータ容量が増えれば,アクセスしやすくなるので高速化に影響するわけですが,容量の差は,ものすごく違う(ここのp17)わけで,高速化にあたっては,いかにキャッシュに載せるのか,いかにキャッシュにあるデータのみにアクセスするのかが大事ということです.ちなみに,メモリからの呼び出しにかかる時間が遅いという弱点を,ノイマンボトルネックやメモリウォールといいます. ハードのアーキテクチャの方に目をむけると,データ転送というのは物理現象であり,オンチップキャッシュやキャッシュの階層化という工夫は既に行われています. そもそも,ムーアの法則で言われているように,"トランジスタの面積を小さくすると,同じ面積で作れるトランジスタの数が増える.これにより,同じサイズでも製造コストは同じで,性能は高まり,消費電力はそのまま",という集積回路の開発技術の向上によって,メモリウォールを改善し,コンピュータの計算性能は右肩上がりを続けてきたわけです. しかし,このムーアの法則が終わりに近づき,ポストムーアの時代への準備が始まっています(参考1,参考2).始まっているといっても,ムーアの時代のようにハードによる計算高速化の明確な方向があるわけではなく,まだ議論している,試している段階のようです(初学者的感想). しばらくは,容量がどんどん大きくなっていくメモリに対して,計算に使う部分をいかにキャッシュに持ってくる・維持するのかという工夫がソフトウェア側には求められそうです. 2017/04/01 博士課程の頃は,わりと外に目が向いていて,ちょこちょこと少し離れたことを勉強をしていて,それが面白く,また,そういうことが大事という印象が強かったのですが,ふと,この1年は,なにをしたのだろうという疑問が最近はわいてきていました.が,とある若手の勉強会に参加したところ,この一年,並列化とコンピュータの勉強をしていたのだなと実感.研究のための道具として直結しすぎて,あまり勉強という印象はなかったのですが,よくよく振り返るとマニュアルやらブログやらで情報かき集め続けていました.まだまだ,定着しておらず,また整理されていない内容が多いですが,この半年でよくかみ砕いていきたいと思います. 2017/02/16 もう2月ですが,四月からこちらの3番のプロジェクトの特命で神戸にて働いてます.スパコンで使うに値するシミュレーションを構築するというプロジェクトです.フラッグシップ(FS)プロジェクトという大仰な名前がついていますが,交通分野(社会経済分野ではと言い換えてもいいかもしれません)ではスパコンを使うというのは世界的にみても稀であり、試行錯誤の真っ只中です. FSといいつつも,他のプロジェクトをみてみると,このへんの人たちがやっているプロジェクトは,社会経済分野をカバーしており,旗はひとつではありません.統計物理や物理工学からの流れであり,我々の分野からみるとどのくらい合っているのかというツッコミがよく入るわけですが,コト、計算という分野での比較になれば,サイズ・人数・早さはどうかと測りやすいものの話になります.さらに,こうしたものが10, 20年続くと果たしてどうなるのかというのは,よく考えるべきことです.昨今のビッグデータの潮流を踏めばより合いやすくなることは確かなわけで,規模や早さがより重要性を増していくことは間違いなく,今後,どうなっていくのでしょうか. |